「犬が捨てられる原因をなくしたい」生体販売の実情を知り、ドッグスリング専門ブランドervaを立ち上げた黄瀬知美さん

「犬が捨てられる原因をなくしたい」生体販売の実情を知り、ドッグスリング専門ブランドervaを立ち上げた黄瀬知美さん

黄瀬知美(ドッグスリング専門家)

黄瀬知美(ドッグスリング専門家)

2015年より日本で唯一のドッグスリング(犬用抱っこ紐)専門店ervaを運営するドッグスリングの専門家

みなさんは、ドッグスリングをご存知ですか? ドッグスリングとは、ワンちゃんのための抱っこ紐です。

 

「抱っこ紐と聞くと、小型犬とのお出かけ場面を想像される方も多いかもしれませんが、実際には20kg程度のワンちゃんまで抱っこできるものもあり、災害や介護の場面でも役に立ちます」

そう語るのは、ドッグスリング専門店「erva(エルバ)」代表の黄瀬知美さん。

 

黄瀬さんは、「わんこが捨てられる原因をなくしていく」という想いを胸に、日本で唯一のドッグスリング専門ブランドを創業しました。
ervaでは、「家族として迎えたわんこは天使になるそのときまで、一生共に生きます」という宣言に賛同した人のみが製品を購入でき、売り上げの一部は保護犬の保護活動への寄付などに充てています。

 

「ワンちゃん向けの商品で「ヒューマンクオリティ」を謳ったものもありますが、個人的には違和感があります。ワンちゃんって、私たちにとって家族で、わが子のようなもの。だから、ヒューマンクオリティなのは当たり前なんです」

 

代表黄瀬さんの、保護活動に対する思いや、ものづくりへの熱い思いを聞きました。

目次

  • ・ ドッグスリングには安全基準のルールがない!? 「ものづくり5か条」に見る、ervaのこだわり
  • ・ 愛犬との出会いが、日本の生体販売の実情を知るきっかけに
  • ・ あやすためにあるドッグスリング。室内利用や犬用防災・介護グッズとしても大活躍
  • ・ 愛犬とキャンピングカーで全国を巡り、開発に勤しむ

ドッグスリングには安全基準のルールがない!? 「ものづくり5か条」に見る、ervaのこだわり

ドッグスリング専門ブランド「erva(エルバ)」代表 黄瀬知美さん
ドッグスリング専門ブランド「erva(エルバ)」代表 黄瀬知美さん

 

――ドッグスリングとは、どのようなものですか?

 

黄瀬知美さん(以下、黄瀬):ドッグスリングは、わかりやすくいえばワンちゃんのための抱っこ紐です。袋状の入れ物に愛犬を入れて、肩に斜めがけにして使います。

 

――なぜ、ドッグスリングを作ろうと考えたのですか?

 

黄瀬:私は前職で、人間の赤ちゃん用の抱っこ紐などを扱う育児雑貨「キューベリー」の代表を務めていました。

 

当時、愛犬のムアを連れて自転車で通勤していたんですが、この子を手で抱っこしていたら危ないですよね。それで、会社にあった人間の赤ちゃん用の抱っこ紐のサンプルに入れたんです。

ドッグスリング利用シーンイメージ
ドッグスリング利用シーンイメージ

 

そうすれば両手があくし、便利だなと思って。動物病院などへ出かける際も使っていたところ、ママ・パパ(飼い主)たちから「それ、どこの?」と話題になりました。

「欲しい」と言ってくれる人がいるなら、商品にしても大丈夫じゃないか、と思ったんです。それに、前職の経験を活かせますから。

――犬専用のスリングを作るとなると、人間の赤ちゃん用とはどのように違うのでしょうか?

黄瀬:まずワンちゃんには、さまざまな犬種があります。さらに個性があって、それぞれで性格も違います。抱っこが好きな子、嫌いな子。胴が長い子、短い子――。

 

ドッグスリングで抱っこされる様々な犬種のわんちゃんたち
ドッグスリングで抱っこされる様々な犬種のわんちゃんたち

 

――たしかに、人間の赤ちゃんとは違い、かなり個体差が大きいですね。

 

黄瀬:はい。それにワンちゃんの商品は、基本的には雑貨扱いです。人間の赤ちゃん用の抱っこ紐には抱っこひも安全協議会が作ったルールがあって厳しく取り締まっているけど、ドッグスリングには何のルールもありません。

 

でも、人間の赤ちゃんとワンちゃんは、命がある生き物という点では同じ。それに、まるで子どものようにワンちゃんを想っている方も多いから、誰かから大切に思われているという点では、平等だと思うんです。

 

――犬用品は規制が少ないのですね。飼い主的には、安全性に不安を持ちます。

 

黄瀬:そうですよね。ですので、ervaでは自分自身がユーザーとなり、「いいと思うものしか作らない」が基本です。そのために、「ものづくり5か条」を掲げています。

 

ervaの「ものづくり5か条」

  1. 自分が使ってみて良いものだけを商品化する 
  2. 実際に使うわんこや人の声に耳を傾ける 
  3. 要素をできる限り削って本質を残す 
  4. 商品を改良し続ける 
  5. 可能な限り日本製でつくる

 

販売者としては、仕入れ値や売値、流行などさまざまな課題がありますが、大切なのは、「ワンちゃんと暮らして、使いやすい」こと。だから自分の愛犬と一緒に使ってみて、「これはいいものだ」と確信を得たものしか世に出さないと強く決めています。

お客様の様々な悩みに合わせてスリングを開発
お客様の様々な悩みに合わせてスリングを開発

 

ママとパパもさまざまな悩みを抱えています。ervaの主なお客様は40~50代の方々ですが、「肩より上に腕があがらない」、「犬を抱っこしすぎて腱鞘炎がある」、「車いすでも犬を抱っこしたい」、「乳がんで胸を切除したから、抱っこすると痛い」など。

また一方でワンちゃんたちにも、「気管虚脱があり首に負担がかかると苦しい」、「抱っこが苦手だから、前が大きく開かないと入れられない」など、ケアしたい悩みがあります。

私はできればその一つひとつに親身に向き合いたいと思っているんです。

 

――お客様の声に真摯に向き合って作られているんですね。

 

黄瀬:ありがたいことに、お客様からは「ervaの商品が好きだから、リードなどのグッズも出して」とお声を頂くこともあります。

けれど、本当に誰かの役に立つものを作ろうと思ったら、ひとつの商品に集中して深堀した方が、リソースを割けると思うんです。

今はしていませんが、今後、セミオーダーやフルオーダーができたら面白いかもしれませんね。そうしたら、もっとお客様の声によりそった商品を提案できるので、楽しみです。

 

――「自分がいいと思えるものじゃないと出さない」と決めているからこその、安全性とクオリティなのですね。

 

黄瀬:ワンちゃん向けの商品で「ヒューマンクオリティ」を謳ったものもありますが、個人的には違和感があります。ワンちゃんって、私たちにとって家族で、わが子のようなもの。だから、ヒューマンクオリティなのは当たり前なんです。

次のページ

愛犬と出会い、生体販売の実情を知る

この記事に関連するキーワード