パピヨンの平均寿命は何歳?長生きさせる秘訣や注意したい病気について解説【獣医師監修】

パピヨンの平均寿命は何歳?長生きさせる秘訣や注意したい病気について解説【獣医師監修】

病気・健康

2022年09月10日 更新 (2022年07月19日 公開)

バーニー動物病院千林分院分院長。ペット薬膳管理士、中医学アドバイザー。動物病院でペットの診療にあたる傍ら犬猫の手作りご飯教室や問題行動のカウンセリングを行う。

パピヨンの平均寿命は何歳?長生きさせる秘訣や注意したい病気について解説【獣医師監修】

パピヨンの平均寿命、最高寿命は?

パピヨンの平均寿命は1315歳前後で、当院での最高齢は18歳でした。他の犬種に比べてオス・メスともに長生きの傾向にあります。

 

避妊・去勢をすることで寿命は伸びる?

避妊や去勢をすることで寿命が伸びるという話もありますが、実際のところはどう影響しているのかは議論の余地があります。ただ、避妊手術去勢手術をすることで生殖器特有の病気の発生を防ぐことができます。たとえば、メスは避妊手術をすることで乳腺腫瘍の発生率が減少し、子宮蓄膿症の発症の防止が可能です。オスは去勢手術をすることで、精巣腫瘍や精巣炎、前立腺肥大の発症を防げます。

人間でいうと何歳?パピヨンの年齢換算表

パピヨンのような小型犬は、最初の1年でほぼ成犬となります。その後は1年ごとに、人間でいえば4歳分の歳をとると考えるのが一般的です。一般的にシニアになるのは7歳くらいとされています。

 

ただ、最近の動物は長寿ということもあり、7歳をプレシニアとし、人間の還暦に相当する10歳ごろからをシニアと考えてもよいでしょう。

 

パピヨンの年齢換算表

犬は人間よりも早く歳をとります。以下の年齢換算表を参考に、愛犬が人間でいうと何歳くらいにあたるのかを把握しておきましょう。

 

犬(パピヨン)の年齢 人間の年齢
1か月(子犬期) 幼稚園児
6か月 小学生
1歳(ほぼ成犬) 15〜18歳
2歳 25歳
3歳 29歳
4歳 33歳
5歳 37歳
6歳 42歳
7歳(シニア期) 46歳
8歳 50歳
9歳 55歳
10歳 59歳
11歳(高齢期) 63歳
12歳 67歳
13歳 71歳

 

パピヨンがかかりやすい病気は?

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パピヨンがかかりやすい病気には以下のようなものがあります。病気のサインとなる症状が出ていないか日頃から注意深く見守っておきましょう。

 

膝蓋骨脱臼(パテラ)

「膝のお皿」と呼ばれる膝蓋骨が正常な位置から外れてしまう状態のことを膝蓋骨脱臼といいます。パピヨンでは内側に脱臼するケースが多いですが、脱臼の程度や骨の変形の度合いにより、症状が出ないケースから歩くことが困難な状態まで幅広い症状があります。治療法としては痛み止めやレーザー療法のような保存療法や手術による外科療法などがあり、ステージに応じて選択されます。

 

進行性網膜萎縮

眼球の奥にある網膜と呼ばれる膜が変性し、視力が徐々に低下する遺伝性の疾患です。初期にはものにぶつかりやすくなったり、動きが鈍くなったりするなどの様子が見られ、進行すると完全に失明します。瞳孔が開いた状態になるため、黒目がちでキラキラと輝き、一見すると「ビー玉」のような瞳になります。

 

眼瞼内反症

眼瞼内反症はまぶたが内側にめくれている状態をさします。まつ毛やまぶたの被毛が目に入るので角膜や結膜に炎症が起きやすく、目ヤニや涙が出たり、角膜に傷がついて痛がったりすることもあります。内反の程度により目薬などで改善することもありますが、根本的な治療には、まぶたの内反を改善する外科手術を行います。

 

パピヨンを長生きさせる秘訣は?

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パピヨンを長生きさせてあげるためには、次のようなことを心がけましょう。

 

日常的にお手入れと観察をする

パピヨンの被毛はシングルコートで絡まりやすいので日常的な被毛のブラッシングが必要です。そのときに、目・鼻・耳・爪の状態も一緒に観察しましょう。異常や病気の早期発見にも繋がりますし、歳をとって内臓機能が弱くなると被毛の艶や毛質、目の輝き、鼻の湿り具合、爪の乾燥具合などにも変化が出てきます。

 

口内環境のケア

歯周病は口の中の歯周病菌が増えて、骨を溶かしてしまう進行性の病気です。歯周病が進むと、細菌が口の中に留まらず全身にまわってしまい、思わぬ重病となることも。日頃から歯磨きや口腔ケアに努めましょう。また、歯磨きをしても残ってしまう歯石に関しては、動物病院で歯石除去を受けることをおすすめします。

 

十分な運動(散歩)を行う

若い頃から運動し筋肉をつけておくこと、健康寿命を伸ばすことにつながります。さらに、シニア期になってからも適度な運動を続けることで、筋肉量の維持、血液の巡りをよくする、肥満防止、病気になりにくい体づくりにも役立ちます。朝日を浴びながらの散歩はストレス発散や日光浴の機会にもなるので特におすすめです。

 

適切な体重管理

パピヨンは太りにくい体質ではありますが、全く太らないわけではありません。避妊・去勢手術を受けた犬は太りやすいですし、食事も欲しがるままに与えているとどんな犬種でも太ります。肥満は万病のもとですので食事量を適切に管理して太りすぎないようにしてください。

 

子犬の頃から定期的に健康診断を行う

子犬の頃から定期的に動物病院で健康状態を見てもらっていると、微細な変化もキャッチしてもらえます。未病の段階で発見して病気の予防に努めましょう。

 

ストレスを与えない

ストレスがあると、免疫力が下がって自律神経のバランスも崩すため、病気にかかりやすくなってしまいます。ストレスのない生活を送らせてあげるためにも、犬の様子をよく観察して、何がストレスとなるのか探りましょう。

 

好きなことを見つけてあげる

その犬の大好きなこと、大好きなものをたくさん作ってあげましょう。好きな人や好きなものに囲まれ、毎日ウキウキして過ごせれば自然と免疫力がアップします。

 

パピヨンの食事で気をつけたいポイントは?

基本的に総合栄養食を適切な量を守ってあげましょう。ただし、パピヨンに限らず、シニアになってくると消化吸収能力が衰えてくるため、若い頃と同じものを与えていても栄養が不足してしまいます。ライフステージによって食事内容を見直し、消化吸収能力や活動量に合わせたフードを与えましょう。以下、注意点を説明します。

 

食事内容

シニアになると歯が悪くなるため、噛みにくくなるほか、嚥下機能が低下して飲み込みにくくなることもあります。そのときの状態に合わせて細かく刻んだりすり潰したりして食べやすくしてあげましょう。

 

食事の与え方

歳をとると筋力も衰えるので体勢を維持するのが辛くなるものです。食事中に体を支えてあげる、姿勢保持クッションを使うなど、シニアになっても自分で食べられるよう工夫してみましょう。

パピヨンの老化のサインは?

茶色いパピヨン

パピヨンが老化してきたかもしれないというサインには以下のようなものがあります。これらのサインが見られたら対処法を実践してみてください。

 

睡眠時間が増えた

いつも寝ている、朝起きてこない、昼間寝ていて夜起きるなど睡眠サイクルに変化が出てきたら、老化のサインです。

 

対処法

朝は起こして朝日に当てるようにしましょう。起床から30分以内に15分程度の日光浴をすると睡眠サイクルが整い、脳も活性化すると言われています。また、寝ている時間が長くなり、短い活動時間の中でも大好きだったことは続けてあげると、脳に良い刺激を与えることになります。たとえば、お散歩が好きであればカートに乗せ、いつものお散歩コースに連れて行くと良いでしょう。ただ、甲状腺ホルモン低下症などの体調不良により起きられないこともありますので、念のため、動物病院で診察を受けてください。

 

耳が遠くなる

帰宅時のお迎えがなくなる、呼んでも振り返らない、花火や雷などの大きな音を怖がらなくなるなどの状態になることがあります。

 

対処法

急に体に触るとびっくりさせてしまうので、視界に入るところまで行ってからそっと触れるようにしましょう。指圧や鍼灸をして脳を活性化したり、頭部の血行をよくしたりすると聴覚の改善に効果が見られることもあるように思います。

 

目が悪くなる

段差や階段を降りられなくなる、知らない道や場所を怖がるようになる、床に落ちたフードを探せないなどの様子が見られます。老化により徐々に視力が低下することもあれば、目の疾患で突然見えなくなることもあります。

 

対処法

多少見えなくても住み慣れた空間であれば不自由なく動けますが、突然配置を変えると、ぶつかったり方向がわからなくなったりすることがあります。シニア犬が見えにくそうにしていたら、家具の配置を大きく変えない、散歩は決まったコースにするなどの配慮が必要です。

 

一方で、網膜の異常や緑内障などの目の疾患が関係して視力が低下することがあるので動物病院の診察も受けましょう。血行を改善する漢方や鍼灸治療が役立つこともあります。

 

階段の上り下りに苦労する

階段を下りられなくなって階段の上から飼い主を呼ぶ、階段を上らなくなるなどの様子が見られるようになることがあります。

 

対処法

階段に滑り止めをつけたり、スロープをつけたりしましょう。老化ではなく、関節炎や痛みが関係することがあるので、念のために動物病院を受診しておくことをおすすめします。

 

毛つやが悪い(被毛の色が薄くなる)

被毛の色が薄くなって艶がなくなることもあります。毛が薄くなったり、パサパサになったりするのも老化現象です。

 

対処法

被毛に良いサプリなどを取り入れて栄養状態の改善を図ったり、皮膚の血行をよくしたりするようマッサージや指圧などを取り入れましょう。明らかな脱毛のときはホルモン異常や代謝異常が関係している場合があるので、獣医師の診察を受けてください。

 

おしっこの回数が変化した

尿の量や回数が増えた、もしくは減った、尿の匂いが変わったなどの変化を感じるようになることがあります。筋力が低下してトイレの段差を越えにくくなっている可能性も考えましょう。

 

対処法

段差の少ないトイレに変えたり、滑りにくいペットシーツに替えたりしてあげると排尿しやすくなります。尿量や回数の変化は、腎臓や膀胱の疾患が関係していることがあるので、一度は動物病院の診察を受けることをおすすめします。

 

お散歩の変化

散歩に行きたがらない、散歩ですぐ帰りたがる、あまり歩かなくなった、走らなくなったなどの変化もでてきます。

 

対処法

寒すぎる、暑すぎる時間帯の散歩は避け、ちょうど良い気温の時間帯に出かけましょう。外に出ることは脳への刺激になり、ストレス発散にもなります。足腰が弱ってきたら、カートに乗ってお出かけするだけでも構いません。ただ、心臓疾患など病気が理由で歩かないこともありますので、一度は動物病院で診てもらいましょう。

パピヨンがシニア期に入ったときのケアは?

シニアのパピヨン

パピヨンがシニア期に入ったときに、どのようなケアをすればよいのか具体的に見ていきましょう。

 

栄養価の高い食事に変える

噛む力や噛み方の変化に対応しましょう。たとえば、小粒のフードに切り替えたり、食事を細かくカットしたり、ブレンダーですりつぶしたりしてから与えるのが効果的です。また、少量で高い栄養を摂取できるような高品質、高タンパク、高カロリーのフードを選びましょう。姿勢の維持が難しくなり食べにくい場合は、楽に食事ができるよう食器の位置を工夫したり姿勢保持クッションを利用したりするのもおすすめです。

 

質の良い睡眠が取れる環境を作る

シニアになると眠りが浅くなったり、体の痛みで目が冷めたりするので、良質の睡眠を取れるように工夫しましょう。ベッドをシニア用に変え、寝る部屋の環境づくりに配慮が必要です。また、目が見えない、耳が聞こえないなどの理由で若い頃にくらべて、寂しがるようになることもあります。その場合は近くで寝てあげるなど、愛犬の体や心の変化に合わせて対応しましょう。

 

日々の運動は継続する

適度な運動はストレス発散、筋力の維持、食欲増進につながります。パピヨンは活発で運動が好きな犬種なので、シニアになっても運動は続けると良いでしょう。

 

ノーズワークなどで脳へ刺激を与える

脳機能の低下を防ぐには新しいものに触れて感情が大きく動くようにすると良いです。楽しいことが日々あると気持ちが明るくなり、脳や免疫に良い影響がでます。聴覚や視覚が低下してくると外部の刺激を感じにくく、段々と反応が鈍くなってきますが、嗅覚は最後まで衰えにくいと言われています。匂いをたどってトリーツを探し出すノーズワークは、シニアになっても続けられる楽しい遊びなのでおすすめです。

 

定期的な健康診断を受けさせる

動物は体調が悪くても言葉にして訴えることができません。食欲や元気がなくなる頃には手遅れの場合もあります。シニアになったら少なくとも1年に2回は健康診断をうけ、病気の早期発見に努めると良いでしょう。


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