子犬の歯が生え変わる時期や順番は?よくあるトラブルや予防方法も紹介

子犬の歯が生え変わる時期や順番は?よくあるトラブルや予防方法も紹介

病気・健康

2023年09月18日 公開

札幌市、平岡動物病院の院長。主に呼吸器、整形、眼科、歯科の外科とエキゾチックアニマル診療を中心に力を入れている。趣味は娘と遊ぶこと。

子犬の歯が生え変わる時期や順番は?よくあるトラブルや予防方法も紹介

犬の乳歯が生え変わる時期

犬の乳歯が生え変わる時期

犬は一般的に生後2ヶ月ごろには乳歯が生え揃い、生後4ヶ月ごろからは乳歯から永久歯へと生え変わりはじめます。生え変わりの完了時期は、生後5~7ヶ月ごろです。成長スピードがゆっくりの超大型犬も、遅くても1歳ごろまでには生え揃います。犬の歯が生え変わるのは、人間と同じように一生に一度だけです。

犬の歯の数と生え変わる順番

一般社団法人ペットフード協会の「令和4年 全国犬猫飼育実態調査」によると、犬の寿命は平均14.76歳です。1歳になる前に歯が生え変わる犬は、生涯のほとんどを永久歯で過ごします。歯を健康な状態に保つためにも、生え変わりの時期は歯の状態を注意深く観察しましょう。ここでは、犬の歯の本数と生え変わる順番を紹介します。


乳歯と永久歯の本数

犬の乳歯は28本、永久歯は42本あり、構成は以下の通りです。


<乳歯>
切歯12本・犬歯4本・臼歯(乳臼歯)12本


<永久歯>
切歯12本・犬歯4本・前臼歯16本・後臼歯10本

 

乳歯から永久歯になることで、臼歯の本数が大幅に増えます。人間の臼歯は食べ物をすりつぶして消化しやすいようにする役割を担っていますが、犬は食べ物を丸呑みする習性があるため、飲み込めるサイズに噛み切る役割を果たしています。そのため、先が尖った形状をしていることが特徴です。

 

生え変わる順番

犬の歯が生え変わる順番は以下の通りです。

 

  1. 下あごの切歯
  2. 上あごの切歯
  3. 下あごの前・後臼歯
  4. 上あごの前・後臼歯
  5. 下あごの犬歯
  6. 上あごの犬歯

犬の乳歯と永久歯の見分け方

乳歯と永久歯では、歯の間隔やサイズが異なります。乳歯は歯と歯の間隔が広く、サイズが小さいことが特徴です。永久歯は歯と歯の間隔が狭く、大きさもしっかりしています。


犬の歯は人間のように乳歯が抜けた後に生えてくるわけではなく、乳歯が抜ける前に永久歯が萠出します。そのため、乳歯と永久歯が重なって生える期間があることも特徴です。ほとんどの永久歯は乳歯の内側に生えてきて、上あごの犬歯のみ乳歯の前方に生えてきます。

歯の生え変わり時期によくあるトラブル

歯の生え変わり時期によくあるトラブル

永久歯に生え変わる期間には、甘噛みや出血、食欲不振などのトラブルが見られます。また、抜けた歯を飲み込んでしまうこともあります。こうしたトラブルの原因や対処方法を紹介します。

 

甘噛み、性格の変化

生え変わり時期の犬は、歯の付け根にムズムズとした痒みを感じます。痒みを我慢できずイライラして、ストレスを発散するために飼い主の手や家具、壁などを噛んでしまうことも多々あります。

 

生え変わり時期の犬は、乳歯の頃の甘噛みよりもさらに強い力で噛めるようになっているため、飼い主の手を思いっきり噛んでケガをさせたり、ものを噛み砕いて破壊したりと問題行動が増えていくでしょう。噛み砕いたものを誤って飲み込んでしまうリスクもあります。こうした危険を避けるためにも。生え変わり前にトレーニングで噛み癖を解消しておくことが大切です。

 

出血

犬の永久歯は乳歯が抜けた後ではなく、歯茎を突き破って生えてくるため、歯肉から少量の出血が見られるケースがあります。出血が生え変わりによるものであれば、すぐに止まることが多いので心配しなくても大丈夫です。

 

ただし、5分以上出血がつづく場合は、止血凝固異常の症状が出ている可能性も考えられます。止血凝固異常はフォン・ヴィレブランド病、血友病などの病気によって発症することもあれば、殺鼠剤を口にしたことで起こることもあります。早めの治療を行うためにも、歯茎からの出血が止まらない場合は動物病院に相談しましょう。

 

食欲不振

生え変わり時期は口の中に痛みを感じることがあり、硬いドライフードを食べることができません。そのため、飼い主からは食欲がないように見えることがあります。噛む必要がないウェットフードに切り替えたりドライフードにお湯をかけるなどしてふやかしたりして、食べやすい状態で提供すると効果的です。

 

フードの切り替えは1~2日目に25%、3~4日目は半分の50%、5~6日目に75%、7日目で100%を目安に切り替えていきましょう。今までのフードから急に切り替えると食いつきが変わったり、胃腸の負担が増えたりするため、徐々に切り替えることが大切です。

 

乳歯の誤飲

犬は取れた乳歯を飲み込んでしまうことがあります。飲み込んでしまったとしても、便として排出されるため問題ありません。飲み込まないようにグラグラした歯を抜こうとするのは、絶対に避けてください。無理に抜いてしまうと乳歯の歯根が歯肉の中に残り、細菌が入り込んで炎症が起きることがあります。

 

また、生えはじめの永久歯もグラグラすることがあるので、乳歯と間違えて永久歯を抜いてしまうかもしれません。こうしたリスクを避けるためにも、自然に抜けるのを待ちましょう。

乳歯遺残に注意

乳歯遺残に注意

生え変わりが上手く行かないことで、乳歯遺残(にゅうしいざん)になる可能性があります。特に小型犬に多く見られ、歯周病を引き起こす原因にもなる病気です。ここでは乳歯遺残を中心に、生え変わり時期に起こりやすい病気について解説します。

 

乳歯遺残(にゅうしいざん)とは

乳歯と永久歯が二重に生えたままになったり、乳歯が永久歯の萌出を妨げたりしている症状のことです。本来抜けるはずの永久歯が残っているため、咬み合せが悪くなる不正咬合や、永久歯と乳歯の間に食べかすが溜まりやすくなることで歯周病を引き起こす可能性があります。

 

不正咬合

歯並びが悪くなることで、フードが食べづらかったり、口の中に違和感があったり、痛みを感じたりすることがあります。違和感や痛みを解消するために頭を振ったり口を気にしたり、血の混じったよだれが出るなどの変化が見られるため、飼い主も気づけるでしょう。不正咬合になった場合は、歯科矯正や抜歯などの外科治療を行います。

 

歯周病

歯周病は歯肉の炎症の総称で、犬がかかりやすい病気として知られています。原因は歯垢に含まれる細菌で、歯肉が赤く腫れる「歯肉炎」や、歯肉の力が弱まって歯がグラつく「歯周病」、歯を顎の骨を繋ぐ歯根膜が化膿する「歯槽膿漏」と、症状が段階的に進行していきます。最悪の場合は顎の骨が溶けて下顎骨が骨折するため、早めの対処が重要です。動物病院では、歯石の除去や投薬などの治療で対処し、症状がひどい場合は抜歯することもあります。

 

乳歯遺残が起きているか確認する方法

飼い主が犬の口の中を見て、生え変わりの経過を観察することで確認できます。乳歯と永久歯が二重に生えている状態が長くつづいていないか、最後に生え変わる犬歯の乳歯が抜けた後も他の乳歯が残っていないかなどを確認しましょう。乳歯遺残を見つけた場合は、動物病院で抜歯処置を行います。早めの処置で不正咬合や歯周病を防ぐことができますので、こまめなチェックが重要です。

 

生え変わり時期に起こりやすい病気は他にもある

乳歯遺残以外にも、生え変わりによって埋伏歯(まいふくし)、欠歯、過剰歯といった病気を発症する可能性があります。

 

埋伏歯、欠歯

永久歯の数が42本未満になる病気が、埋伏歯や欠歯です。永久歯が歯肉や顎骨に埋まったまま生えてこないことを埋伏歯、そもそも永久歯が42本未満しか生成されていないことを欠歯(欠如歯、無歯)と言います。埋伏歯は必要に応じて抜歯や歯肉の切除を行いますが、欠歯の場合は治療の必要はありません。ただし、歯が本来の本数より少なく、歯と歯の隙間が広くなっているので、歯周病につながらないよう注意しましょう。

 

過剰歯

欠歯とは反対に、永久歯が43本以上生成される病気です。過剰歯自体は治療の必要はありませんが、歯が多いことで噛み合せが悪くなっていたり、食べかすが詰まりやすく歯石が気になったりする場合は、症状に合わせた治療が必要です。

生え変わり時期のトラブルを防止する方法

生え変わり時期のトラブルを防止する方法

生え変わり時期の問題行動や病気などのトラブルを避けるためにできる対策を紹介します。

 

こまめに歯磨きをする

生え変わり時期は歯石や歯垢が溜まりやすいため、歯磨きで口内を清潔に保つようにしましょう。歯磨きは1日1回行うのが理想です。歯に痛みを感じている可能性も高いため、歯ブラシの角を利用して優しいタッチで磨きましょう。

 

生え変わり時期に歯磨きを嫌がることを防ぐためにも、犬をお迎えしてからすぐに歯磨きトレーニングに取り掛かるのがおすすめです。犬用の歯みがきシートや指サック歯ブラシ、歯磨きジェルなどさまざまな歯磨きグッズが販売されているので、愛犬の好みに合ったグッズを活用して口を触ることに慣れてもらいましょう。

 

ガムやおもちゃを与える

噛みごたえのあるガムやおもちゃなどを与えることで、生え変わりのむず痒さを発散することができます。ガムは子犬用のものを、おもちゃは誤飲を防ぐために丈夫なゴム製、ナイロン製、木製のものを選ぶと安全です。ガムやおもちゃを与えることで、本来噛んではいけないものを噛む癖や、誤飲を防止する効果もあります。子犬期でも噛む力は想像以上に強く、ガムやおもちゃを破壊したり誤飲したりする可能性が高いので、遊ばせている間は目を離さないよう注意しましょう。

まとめ

生え変わり時期は口の中の違和感から、甘噛みや食欲不振など愛犬の様子に変化が見られます。また、この時期は歯石が溜まりやすく、乳歯が抜けきらない乳歯遺恨になると手術が必要になるため、こまめに口内をチェックすることが大切です。愛犬が一生付き合っていく永久歯ができるかぎり綺麗に生え揃うよう、歯のブラッシングをしたり、ガムやおもちゃを与えたりすることでサポートしてあげましょう。