「全体のうち、動物福祉の「5つの自由」を考慮している記載割合は36.8%で、約6割のサイトで動物福祉を考慮しない不適切な内容が認められました」
動物福祉を考慮した記載があるサイトでも、今回の対象サイトには、その全てで「飢えや渇きからの自由」について推奨されていないことが明らかになっています。
伊藤さんら研究チームは、残りの4つの項目(不快からの自由、痛み・怪我・病気からの自由、本来の行動が取れる自由、恐怖や苦痛からの自由)と、専門家へのカウンセリングを促しているのかの5項目についても評価しました。
動物福祉を考慮している記載があった約4割のサイトのうち、
- 「不快からの自由」の記載は27.9%、
- 「痛み・病気・怪我からの自由」が51.2%、
- 「本来の行動が取れる自由」が27.9%、
- 「恐怖や苦痛からの自由」は41.9%
で対応している、という結果になりました。
もっとも動物福祉を考慮していたグループは8つのうちの「H(その他)」のサイトで90%、最も考慮されていなかったのは「G(飼い主)」が運営するサイトで8.6%です。
また、個人飼い主が運営しているサイトでは「不快からの自由」、「本来の行動が取れる自由」、「恐怖や苦痛からの自由」について、まったく考慮されていないという評価でした。
このことから、個人飼い主のサイトは情報信頼性の評価が極めて低いことがわかります。
全体のうち、専門家へのカウンセリングを推奨しているサイトは34.9%となりました。
伊藤さんたちはさらに、動物福祉の視点で不適切と判断された単語を、
- 犬に苦痛を与える行為
- 犬に不快感を与える道具や方法
- 飼育者との関係
の3つの特徴で分類し、具体的な表記について、次のようにまとめています。
出典:「飼い犬の咬傷行動に関するインターネット情報の信頼性」日本獣医師会雑誌 75 (2), e36-e45, 2022
「犬に苦痛を与える行為」の項目では、激しく殴る、犬の首や頬を噛む、犬の首根っこを激しく殴るなどの記載があります。
「犬に不快感を与える道具や方法」の項目では、しつけ用スプレー、大きな音を立てる、ガンガン叱るといった行為についての記載がありました。
さらに、「飼育者との関係」の項目においては、現在のところ科学的根拠が明示されていない「主従(上下)関係を見直す」等が見られたそうです。
この結果をもとにして、伊藤さんたちは動物福祉を考慮しない具体的な表記内容と関連する単語の共起ネットワークを作成しました。
インターネット情報の「動物福祉」を考慮しない具体的な表記内容と、特徴に関連する単語リストから作成された共起語ネットワーク
出典:「飼い犬の咬傷行動に関するインターネット情報の信頼性」日本獣医師会雑誌 75 (2), e36-e45, 2022
■共起ネットワークの見方
「共起ネットワーク」は単語同士の相対的な距離を表すもので、近くの単語同士は出現傾向が類似していて共起関係にあることを示しています。
円の大きさが出現回数を示し、同じ色の円は距離が近い単語同士であることを示します。また、共起ネットワークの特徴を表すための指標として、「ネットワーク中心性」を用います。
「ネットワーク中心性」とは、ネットワークにおけるリンクの重要性を表わす指標です。 つまり、動物福祉の配慮が欠けている単語として、上の図を見ると「恐怖」がネットワークの中で中心的な役割を果たしていることがわかります。
また、この中心となっている「恐怖」という単語が、「主従関係」「痛み」「口輪」「リーダー」の単語と特に関連していることが示されています。
【調査結果のまとめ】
- 提供されている情報で、専門家による監修は2割程度
- 科学的根拠の明示は2.3%
- 最終更新日が記載されているウェブページの63.2%が2018年以前のもの
- 約6割のウェブページで,動物福祉を考慮しない不適切な内容が認められた