犬のクッシング症候群とは?原因と治療法、6歳以降は特に注意が必要な理由について解説【獣医師監修】

犬のクッシング症候群とは?原因と治療法、6歳以降は特に注意が必要な理由について解説【獣医師監修】

クッシング症候群はホルモン異常が原因で起こる病気で、人間や猫などと比べると、犬に起きやすい疾患と言われています。特に6歳以降の犬やシニア犬に多いとされており、進行するとほかの感染症や病気を併発する恐れもあるので、少しでも疑わしい症状が見られたら注意が必要です。今回は、犬のクッシング症候群がどんな病気なのか、その症状、原因、病院での治療方法などをchicoどうぶつ診療所所長で獣医師の林先生に詳しく教えていただきます。

クッシング症候群ってどんな病気?

犬のクッシング症候群とは?原因と治療法、6歳以降は特に注意が必要な理由について解説【獣医師監修】クッシング症候群は、別名・副腎皮質機能亢進症とも呼ばれる内分泌疾患の一つです。腎臓すぐ近くには「副腎」という臓器が、左右の腎臓に対して一つずつ存在します。クッシング症候群は、そこから分泌されるコルチゾールというホルモンが、何らかの原因で過剰に分泌されることによって起こる疾患です。

6歳以降の犬がクッシング症候群になりやすいって本当?

クッシング症候群は、610歳での発症例が多く、オスよりメスのほうが発症しやすい傾向にあります。また、ダックスフンドやプードル、ビーグルといった犬種で発症する確率が高いとも言われています。

犬のクッシング症候群の症状とは?

犬のクッシング症候群とは?原因と治療法、6歳以降は特に注意が必要な理由について解説【獣医師監修】犬のクッシング症候群はどのような症状なのでしょうか。症状と症状が進行した場合どうなってしまうのかを解説します。


クッシング症候群の主な症状

クッシング症候群の主な症状は、以下のものが挙げられます。

 

・多飲多尿

・異常な食欲

・脱毛

・皮膚の黒ずみ、菲薄化

・お腹が大きく膨らむ

・呼吸が早くなる

・足腰の弱り

 

最も気づきやすい代表的な症状としては、多飲多尿(水をたくさん飲み、排尿量が増加する)です。そのほかにも、異常な食欲、脱毛、皮膚の黒ずみや菲薄化(皮膚が薄くなる)、腹部膨満(お腹が大きく膨らむ)、呼吸促拍(呼吸が早くなる)、足腰の弱りなどが見られます。これらは、ホルモンの異常により、代謝が変化したり、免疫力や筋力が低下したりすることによって引き起こされます。


クッシング症候群が進行するとどうなる?

コルチゾールの過剰分泌によって免疫力が低下すると、易感染性という状態になります。感染症にかかりやすくなったり、糖尿病を併発しやすくなったりするなど、ほかの疾患に罹るリスクが高まるため、早めに治療していくことが大切です。

犬のクッシング症候群の原因は?

犬のクッシング症候群の原因はどのようなところにあるのでしょうか。大きく2つのパターンがありますので、みていきましょう。


下垂体に腫瘍がある場合

脳下垂体から分泌されるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンは、副腎から分泌されるコルチゾールの量を増加させるはたらきがあります。脳下垂体に腫瘍ができると、このACTHをたくさん分泌するよう指令が下され、それに伴って副腎からのコルチゾールの分泌量も増加してしまいます。犬のクッシング症候群の多くが、この脳下垂体の腫瘍によるものだとされています。


副腎に腫瘍がある場合

副腎自体に腫瘍ができてしまうこともあります。副腎が腫瘍化することで過剰にはたらき、コルチゾールが過剰分泌されることで、クッシング症候群を発症します。

犬のクッシング症候群の症状があったらすぐに病院に行くべき?

脳下垂体の腫瘍によるクッシング症候群の場合には、神経症状も起こすこともあり、徘徊や夜鳴き、痙攣発作などが見られる場合もあります。高齢化に伴って現れる症状と似ているため見過ごしてしまいがちですが、こうした症状が現れた場合には、動物病院を受診したほうが安心です。

 

また、前述した通り、クッシング症候群を発症すると、易感染性の状態となり感染症にかかるリスクが高まり、皮膚炎や膀胱炎などを起こしやすくなったり、糖尿病も併発しやすくなったりします。リスクを減らすためにも、症状が進行しないうちに早めに通院することをおすすめします。

犬のクッシング症候群の病院での診断方法は?

犬のクッシング症候群とは?原因と治療法、6歳以降は特に注意が必要な理由について解説【獣医師監修】血液検査でALP(アルカリフォスタファーゼ)、ALT(アラニンアミノ基転移酵素)、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)負荷試験を行い、臓器に異常がないかを調べます。そのほかにも、尿検査で尿の比重を確認したり、エコーで副腎腫大が起きているかどうかの確認をします。さらに、検査が必要な場合は、CTMRIで脳下垂体の大きさを検査することになります。

クッシング症候群と診断された場合、普段の生活で気をつけることは?

クッシング症候群になると感染症にかかるリスクが高まるため、体を清潔に保つことが重要です。日頃の生活を特別に変える必要はありませんが、適切な食事、適度な運動、十分な睡眠は、健康維持の秘訣でもありますので、クッシング症候群を患ってしまった犬でも心がけるべきでしょう。

犬のクッシング症候群の治療方法は?

もし、愛犬がクッシング症候群を患ってしまった場合はどのように治療すれば良いのでしょうか。下垂体、副腎の2パターンに分けてみていきましょう。


下垂体の腫瘍の場合

腫瘍が小さい場合には、副腎のコルチゾールの生産を抑えるための投薬治療を行います。しかし、服薬でクッシング症候群を完治させることは難しく、基本的に生涯をとおして治療を続けることになります。体への負担や副作用は比較的少なくすむ反面、量を誤ると、コルチゾールが抑制され過ぎて、嘔吐や下痢などの症状が見られる場合もあるので、注意が必要です。

 

腫瘍が大きい場合には、内服薬を使用しながら、外科的処置や放射線治療を行う場合があります。ただし、これらを行える病院の数は少なく、費用も高額になるのが現状です。通院できる場所にそのような病院があるかは確認が必要でしょう。


副腎の腫瘍の場合

外科的処置で腫瘍を部分的に切除、または副腎自体を摘出することになりますが、転移が見られる場合には行えないこともあります。副腎に腫瘍がある犬は手術創の回復に時間がかかることもあり、リスクが高い治療であることは理解しておく必要があるでしょう。なお、副腎は二つあるので、片方を摘出しても健康に大きな影響はありません。

犬のクッシング症候群の治療費用の目安は?

犬のクッシング症候群とは?原因と治療法、6歳以降は特に注意が必要な理由について解説【獣医師監修】治療費用は犬の体重や病態の進行度合いによっても変わりますが、子型犬の場合、12回の投薬であれば1日あたり6001,200円程度が目安と考えましょう。放射線治療の場合、4回で4060万円ほどが一般的ですが、治療の効果によっても増減します。副腎腫瘍の外科的処置(切除)の場合は、1525万円ほどが相場とされています。

犬のクッシング症候群の予防法は?健康診断でわかる?

残念ながら、予防法はありません。定期的に検診を受けて早期発見を心がけましょう。健康診断での確定診断は難しいですが、「疑わしい」という状態は分かるので、そこから専門的な検査へとつなげることができます。

犬のクッシング症候群の注意点は?

クッシング症候群は、症状が特徴的でなかったり、顕著に現れるものではなかったりすることから、発見しにくい病気とも言われています。元気がない、毛が抜けるなど、老化現象と間違いやすい症状が多いため、飼い主もつい見過ごしてしまいがちです。少しでもいつもと違う状態が見られたら、念のため病院を受診されることをおすすめします。


※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家のコメント:

犬のクッシング症候群は決して珍しい病気ではありません。有効な予防法がないことから、一定の年齢を超えてからは、どの犬も発症するリスクを抱えています。あまり神経質になる必要はありませんが、日頃から食事や運動、睡眠といった基本的な健康管理はしっかりと行ってあげるよう心がけましょう。発症すると完治が難しい病気でもあるので、早期に発見することで重症化を防ぐことが大切です。

監修/林美彩先生(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長。大学卒業後、動物病院やサプリメント会社勤務を経て、体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、2018年に往診・カウンセリング専門動物病院「chicoどうぶつ診療所」を開設。著書に「獣医師が考案した長生き犬ごはん」(世界文化社)。

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著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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