犬の痙攣(けいれん)の原因とは?病院に連れて行くべき症状と考えられる病気について解説【獣医師監修】

犬の痙攣(けいれん)の原因とは?病院に連れて行くべき症状と考えられる病気について解説【獣医師監修】

病気・健康

2022年09月19日 更新 (2021年01月21日 公開)

chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。

犬の痙攣(けいれん)の原因とは?病院に連れて行くべき症状と考えられる病気について解説【獣医師監修】

そもそも犬の痙攣とは?

人間と同じように、犬も痙攣を起こすことがあります。犬の痙攣は、自分の意思と関係なく体の一部や全体が震えることを指します。筋肉が収縮し、ピクピクと小刻みに痙攣するのです。

犬が痙攣を起こした場合、考えられる原因や病気は?

犬の痙攣の原因とは?_犬の痙攣

犬が痙攣した場合、原因はいくつかあります。基本的に、犬の痙攣は大脳皮質と呼ばれる脳の表面の皺の部分に、なんらかの障害が起きた時に発生すると考えられています。

 

病気として考えられるのは、脳腫瘍、外傷、脳炎、脳梗塞などといった脳自体の病気。ほかにも、遺伝性素因が原因となる特発性てんかんや、体内の毒素によるもの(尿毒症や肝不全などで、体内毒素の代謝・排泄が滞るため)で起きる場合もあります。

 

また、病気以外では熱中症や低血糖、中毒が原因でも起こることもあります。

痙攣を起こしやすい年齢や犬種はあるの?

痙攣は、犬の成長段階のどの時期でも発症が見られます。また、犬種によって痙攣しやすいということはありません。一方で、夜中や明け方の睡眠時、休憩時などの時間帯に起こりやすいと言われています。

 

痙攣は単発的な症状ですが、2回以上連続して起きた場合はてんかんが原因だと考えられます。てんかんは慢性の脳の病気で、犬では約100頭に1頭の確率で起きると言われています。てんかんは、生後6カ月~3歳までに発症することが多いようです。

 

特発性てんかんに関しては遺伝的な要因があり、ゴールデン・レトリーバーラブラドール・レトリーバー、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、シェットランド・シープドッグ、シベリアン・ハスキー、ビーグルなどの犬種が発症しやすいと言われています。

犬が痙攣を起こした場合の対処法は?

犬が痙攣を起こした場合、思わず駆け寄ってしまう飼い主も多いと思います。ですが、愛犬のためにまずは冷静になってください。室内、室外を問わず、まずは犬の様子と周りを確認しましょう。犬の周りに危ないものやぶつかりそうなものはないでしょうか。痙攣が起きると暴れてしまう犬もいるので、ぶつかりそうなものがあれば退けてあげましょう。犬の体を無理やり押さえつけたり揺さぶったり、大きな声で名前を呼ぶのは厳禁です。

 

また、痙攣している犬に寄り添いたくなるのが人情ですが、顔の周りに触ってはいけません。間違って噛んでしまうことがあるからです。無意識であるため、噛む力も非常に強くなっていて危険です。首輪やリードを付けている場合は、安全な場所であれば取り外してあげてください。落ち着いたあと、嘔吐物がある場合はのどに詰まらないように取り除き、よだれなどはふき取ってあげましょう。

 

全身痙攣の場合、犬に意識はないので「辛い」や「苦しい」といった感覚もありません。ほとんどの痙攣は2~3分、長くても5分程度で落ち着きます。飼い主も冷静になって、痙攣が起きている時間を測ったり、動画に撮ったりしておきましょう。痙攣と言ってもさまざまな症状があるため、動画があると動物病院で説明しやすくなります。痙攣後の状態の観察も忘れずに行ってください。

犬が痙攣を起こした場合、動物病院に行くべ気かどうかの見極めポイントは?

犬の痙攣の原因とは?_犬の痙攣

痙攣が数分でおさまり、その後いつもの様子と変わらなければ様子見でも大丈夫です。心配な場合は、翌日の日中に動物病院に連れて行きましょう。

 

ただし、群発発作(1日に発作が2回以上起こること)や、重積発作(発作時間が5分以上、もしくは1回目が終わった後意識が戻らないうちに2回目の発作が起きること)が見られる場合には、緊急事態なので昼夜を問わずすぐに受診してください。犬の痙攣は夜中に起こりやすいため、夜間診療を受け付けている動物病院をあらかじめチェックしておくと慌てずに済みます。

 

また、犬が寝ている時にビクッと動いたり、手足をバタバタさせたりしていることがありますが、これは病気が原因ではありません。犬も人間と同じように、浅い眠りと深い眠りを繰り返しています。浅い眠りの時に夢を見て、このような状態になることがあるのです。痙攣ではないので、安心してください。

犬が痙攣を起こして動物病院に行く場合、用意しておくべきことは?

痙攣中、痙攣後までの一連を動画に撮っておくのが良いです。痙攣の症状は、口頭ではうまく伝わらないことがあります。動画があれば一目瞭然なので、治療の手助けになります。また、痙攣が起きる前などに、いつもと変わったことをしていないかどうかなどのメモもあると診察がスムーズになります。

犬が痙攣を起こした場合の治療法は?

痙攣の原因によって治療法は変わります。

 

・代謝の異常

毒素を体内から排出するための点滴治療、各主症状の緩和や進行を抑えるための投薬治療、食事療法など。

 

・中毒

解毒剤の投与、点滴、投薬など。

 

・感染症

投薬、点滴など。

 

・水頭症

利尿剤の投与。

※外科手術が必要な場合も。

 

・脳の炎症や腫瘍

抗炎症作用薬の投与、外科手術など。原因の治療を行う場合は、手術やその他内服薬、点滴などが有効です。痙攣そのものを落ち着かせるための治療は、内服薬が中心となります。

犬の痙攣を予防するために普段の生活で気をつけることは?

痙攣は突然起こるものなので、特に気を付けるべきことはありません。ただ、中毒や熱中症、低血糖による痙攣の場合は、中毒を起こすようなものを与えない、熱中症対策を徹底することなどで予防できます。子犬は低血糖が起こりやすいので、食事の管理も心がけると良いかもしれません。

犬の痙攣を事前に察知する方法は?

犬の痙攣の原因とは?_犬の痙攣

ふらつきが見られたり、同じ行動を繰り返したりしているなど、いつもと少し違う様子が見られたら注意して観察しておきましょう。

 

また、健康診断を定期的に受けることで、痙攣の原因となる病気を早期に発見することができます。今は元気でも、将来的な予防のために健康診断は受けておきましょう。


第2稿:2021年3月11日更新
初稿:2021年1月21日公開

※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。