2023年05月30日 公開

96歳のおじいちゃん×ゴールデンドゥードルのシエルくんの凸凹コンビ
ゴールデンドゥードルのシエルくんとおじいちゃんは、いつも一緒。
94歳差のコンビのふたりの仲良しな様子を綴るインスタグラムは、現在フォロワー16万人。穏やかで幸せな日常がほっこりやさしい気持ちにさせてくれると、大人気のアカウントなんです。

インスタを投稿しているのは、シエルくんの飼い主さんで、おじいちゃんのお孫さんにあたる椎津さん。記録としてシエルくんとの暮らしをアップしていたところ、あっという間にフォロワーが増えていきました。

おじいちゃんの体調不良をきっかけに、椎津さんとご主人、娘さんの3人家族と一緒に住むようになりました。同時に、シエルくんとの新しい暮らしも始まった椎津さんご一家。
小型犬と大型犬の違いとは? おじいちゃんと大型犬の相性は? 初めて大型犬と暮らす椎津さんにお話を伺いました。
20年ともに過ごした愛犬との別れ、ゴールデンドゥードルの子犬との出会い
子どものころから動物が大好きだった椎津さんには、20年間寄り添ってくれた愛犬がいました。ミニチュアダックスフンドのライムくんです。最愛のライムちゃんが2020年に旅立ち、その喪失感からしばらくは「再び犬を飼う」という気持ちにはなれなれませんでした。

もしいつかまた犬を家族に迎えるときは、ライムと比べたりしないように大型犬を飼おうと決めていました。そんな椎津さんとシエルくんの出会いは、約2年前の2021年。
「ペットの小鳥のエサを買うためにペットショップへ行っては、よく子犬を眺めていました。でも、ライムよりかわいいと思える子にはなかなか出会えなくて……」
ある日、いつものように家族でペットショップへ行くとジッとこちらを見つめる視線を感じました。
まわりの子よりもひときわ大きな体をして、ちょこんとお利口に座っている子犬と目が合った瞬間、椎津さんは「この子だ!」と思ったそうです。
生後3ヶ月のゴールデンドゥードル。それは一目惚れのような出会いでした。
しかし、一時の感情で犬を育てることはできません。家に帰って家族と話し合いをしたうえで、犬を迎え入れる準備に取り掛かりました。
「今まで小型犬しか育てた経験がなかったので、大型犬の飼い方や育てるための注意点などをたくさん調べました。また、ペットOKのマンションには住んでいるものの、周りに大型犬を飼っている方がいなかったため、大家さんに許可をいただきに行きました」
お迎えに行くまでに、もしほかの人のところへ行ってしまったら「運命じゃなかったのだ」とあきらめよう……。願うような気持ちで向かうと、あのふわふわの子が待っていてくれました。

小型犬との違いに戸惑い…愛犬と暮らしやすい環境を作るために“トレーニング”

ゴールデンドゥードルは、プードルの賢さと人懐っこさ、ゴールデン・レトリーバーの温和で社交的な性格を兼ね備えたミックス犬。シエルくんは、元気いっぱいのやんちゃな性格でした。
「小型犬と違って、大型犬は子犬でも粗相をするとすごい量なので驚きました。甘噛みもあって、本人はじゃれているつもりでも洋服がやぶれてしまうことが何度もありました」
先代犬のライムくんがおとなしく手のかからない子だったこともあり、はじめはシエルくんのやんちゃぶりに戸惑ったそうです。
「マンションに住んでいることもあり、ご近所に迷惑をかけないためにもすぐにトレーニングをはじめました。自宅周辺でトレーナーさんがいなかったため、まずは電話で教えていただきながら自宅でしつけを行いました」
例えば、飼い主の合図でおしっこができるようになる『ワンツートレーニング』。大型犬は、歳をとり、体が衰えてからも大変です。椎津さんは、軽く抱き上げることが難しいので、子犬時期のトイレトレーニングが大事だと習いました。
「ワンツー、ワンツー」と声をかけることで、おしっこの合図だと覚えさせるトイレトレーニング法です。犬の幼い頃の記憶は、忘れにくく、シニア犬になっても反射的に排泄ができるようになるのだといいます。
それから生後5ヶ月から1歳までの半年間は週に3回トレーナーのもとに通い、人間社会のなかで快適に暮らしていくためのルールを身につけさせました。おかげで現在2歳になったシエルくんは、ご近所に迷惑をかけることなく、おじいちゃんにも娘さんにも穏やかに接することができるやさしい子に成長しています。
「SNSだけだと、大人しそうに見られがちですが、まだまだ遊び盛りのやんちゃ坊主です。家のなかでは相変わらず、興奮して大はしゃぎしたり、いたずらもします。でも、外に出るととってもお利口なので、家族からは『犬なのに猫かぶってる』って言われています(笑)」

「まるで夫婦?」おじいちゃんとひ孫犬の相思相愛な関係
椎津さんいわく、シエルくんにとっておじいちゃんは『安心してくつろげる居場所』なのだとか。
「シエルは祖父のことが大好きなんです。祖父はシエルを絶対に怒らないし優しいから、祖父の前ではいつも甘えん坊になります」

おじいちゃんがお昼寝をしたら、起こさないようにそっと離れていき、目が覚めた気配を感じたらまた静かに寄り添いに来るシエルくん。椎津さんが叱って言うことを聞かない時でも、おじいちゃんの『ダメ』の一言はシエルくんにしっかりと響きます。
おじいちゃんに撫でられている時がシエルくんの至福です。
現在96歳のおじいちゃん。94歳年下のシエルくんは「ひ孫」のような存在だといいます。
「シエルにお留守番をさせようとすると、真っ先に祖父が『シエルがかわいそう』っていうんです(笑)。私たち以上にシエルを溺愛してくれていて。もともと元気な祖父でしたが、シエルと一緒に暮らすようになってからよく笑うようになって、私たち家族もうれしいです。今では、シエルくんはおじいちゃんの長生きの糧であり、おじいちゃんはシエルくんの穏やかな性格の支えになっています」

シエルくんは約2年前、おじいちゃんとおばあちゃんが体調不良で入院していた時、椎津家にやってきました。
「当時、祖父が車椅子生活になったこともあり、『大型犬の方が高さが合っていいかもね』なんて話していたんです」
おばあちゃんはそのまま亡くなってしまい、シエルくんとの対面は叶いませんでしたが、退院したおじいちゃんは、コロコロとした子犬のシエルくんとの同居生活がスタート。みるみるうちに、おじいちゃんにも笑顔が増えていきました。
「シエルと祖父は、ベッタリくっつくわけでもなく、付かず離れずのいい距離感で、長年連れ添った相棒、夫婦のように見えることもあります(笑)。シエルが、おばあちゃんがいなくなった寂しさを埋めてくれたのかもしれません」と椎津さんは語ります。
マイノリティな大型犬との暮らし。マナーを守り周りへの配慮を
長年小型犬のダックスフンドと暮らしてきた椎津さん一家。シエルくんを迎え、初めての大型犬との暮らしで、気づいたことがたくさんありました。
まず大型犬を飼って1番よかったことは、抱き締めがいがあること。「ギュッと抱き締めている時が幸せ!」と、満面の笑みで教えてくれました。一方、大型犬は様々な施設で受け入れられにくい、サイズが想定されていない、などの不便さも感じるようです。
「地方在住ということもありますが、ペットサロンやペットホテルでも大型犬NGのところも多いです。急な予定が入ってしまった時などでも、預けることができず、困ったこともあります。また、首輪やリードも大型犬用は取り揃えているところが少ないのでネットで買うしかありません。素材やサイズを確かめられないため、買い直すこともしばしば……」

そんなシエルくんは、人が大好き。マンションの住民の方に会うと、ピョンピョン跳ねてあいさつをするため、ご近所の皆さんからとても可愛がられています。
「『マンションのエレベーターでは、犬を抱っこして乗る』という規定があったので、お散歩や外出の度に、必ずシエルを抱っこしてエレベーターに乗せていました。しかし、シエルが10kgを超えた頃、見かねた住民のみなさんが『シエルくんはお利口だから、特別に抱っこなしで乗っていいですよ』と、言ってくださったんです」
不便を感じることもある大型犬の暮らし。ですが、マナーを守り周りへの配慮を忘れないことで、人も犬も幸せに暮らしていけるのかもしれません。
愛犬の生き別れの兄弟から連絡。SNSが繋いだ奇跡の交流
今や、インスタグラムでも大人気のシエルくん。椎津さんが日常の記録としてはじめたインスタですが、発信をすることで思いもよらない奇跡が起こりました。
ある日、「シエルくんと誕生日が一緒です!」と届いた1通のDM。それはシエルくんと同じ犬種のゴールデンドゥードルの飼い主さんからでした。
何度かやり取りを重ねてみると、兄弟かもしれないという可能性が……。
「シエルをペットショップからお迎えしたとき、長崎県のブリーダーのもとで7匹生まれたうちの1匹だと教えてもらいました。でも、シエルの兄弟やお父さん、お母さんのことまでは聞くことができずに、ずっと気になっていたんです」
インスタグラムの発信を通して、兄弟からブリーダーさんにもつながることができました。話を聞くと、7匹生まれたうちの6匹はブリーダーさんから直接飼い主のもとへ届けられ、1匹だけがペットショップへ引き渡すことになったのだそう。
ブリーダーさん自身、ペットショップへ出すのははじめてのこと。しかし、どんな人に飼われてどんな家庭で暮らしているかまでを教えてもらうことはできず、預けたことをずっと後悔していたのだといいます。
「インスタグラムでシエルの様子を見て、『幸せに暮らしていることを知れてよかった』と心から喜んでくださいました。ブリーダーはシエルの子犬のころの写真を送ってくれて、私たちが知らない頃のシエルを知ることができました。今でも兄弟やブリーダーさんとありがたい交流をさせてもらっています。SNSからこんなつながりが生まれることもあるんですね」

大好きな家族、近所の方たち、ブリーダーさんや兄弟の飼い主さんたちに見守られ、幸せに暮らすシエル。シエルくんもまた、椎津さん一家に幸せを運んできてくれました。
そして、これからも94歳差コンビがたくさんの人を笑顔にしてくれるはずです。