【獣医師監修】犬の去勢手術は必要?メリット・デメリットや費用、術後の注意点などを解説

【獣医師監修】犬の去勢手術は必要?メリット・デメリットや費用、術後の注意点などを解説

飼っている犬が男の子の場合、去勢をするかどうか悩まれる飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。去勢には大きなメリットが存在する一方でデメリットもあります。今回は、獣医師の茂木千恵先生に犬を去勢するメリット・デメリットや、術後の注意点などについて詳しく伺いました。

犬の去勢手術の効果とは?

飼い主と仲良しの犬犬は去勢することによって、平均的に1.5年長生きするといわれています。また、余命も13.8%増加するとされており、飼い主にとっては嬉しい効果があると言えそうです。

子どもを産ませるのを考えていない場合はもちろんのこと、仮に産ませようと思っていた場合でも、遺伝的な問題を防いだり、責任を持って飼いきれない頭数を抱えてしまったりしないためには、去勢するのが望ましいでしょう。

犬の去勢手術はいつから始まった?

現代では犬を去勢することが一般的になっていますが、その起源は20世期の初頭のアメリカにさかのぼります。

当時、アメリカでは犬が至るところで放し飼いにされていました。そのため、野外で出産をする犬も多く、飼い主のいない犬がさまざまな場所でさまよっている状態でした。そういった野犬に噛みつかれたり、狂犬病に感染したりといったトラブルも多くあったことから、1970年代に犬の去勢手術と避妊手術がスタンダードになっていったのです。

犬に去勢手術をするメリットとは?

元気な雄犬犬にとっての去勢のメリットは?

去勢は健康面で非常に有効です。まず、去勢をすることで精巣がんのリスクをゼロにすることができます。さらに、加齢にともない前立腺も病気にかかりやすくなりますが、前立腺まわりのトラブル(良性の前立腺肥大症・肛門周囲腺腫)などのリスクを軽減することもできます。

ただし、これらのメリットを享受するためには、早期に手術を受けさせることが必要です。特に、生後6か月を過ぎても精巣が陰嚢内に降りていない犬は、お腹の中に残った精巣が腫瘍化するリスクが高いため、早めに手術をして取り除くことが必要です。



飼い主にとっての犬の去勢のメリットは?

去勢をすることで飼い主が得られるメリットは、犬の問題行動が減ることでしょう。例えば、縄張り防衛の行動や他の犬への威嚇は、性ホルモンから引き起こされることが多いため、こうした行動を減らす効果が期待できます。また、早期に去勢したほうが、留守番中の吠えが起こりにくくなることも明らかとなっています。

こうした行動は犬種ごとに強く出たり弱く出たりするものですが、来客が多いお宅や、家の前を知らない人が通りやすい環境にいる犬は問題行動が増えやすい傾向にあるため、去勢をしておくことで問題行動を減らせる可能性があります。

犬に去勢手術をするデメリットとは?

肥満の犬犬にとっての去勢のデメリットは?

・一部の犬種で関節疾患やがんのリスクが高まる

アメリカの獣医科大学での最近の研究で、一部の犬種では去勢手術をすることで、関節疾患やがんなど特定の疾病へのリスクが高まるということがわかりました。特に、ゴールデン・レトリーバーラブラドール・レトリーバージャーマン・シェパードは、生後6か月より前に去勢手術を受けると、関節疾患の発生率が24倍にもなったのです。

小型犬は関節疾患の危険性が高まるとは今のところ報告されていませんが、ボストン・テリアシー・ズーがん腫が増加したという報告もあるため、注意が必要でしょう。



・自己免疫疾患や炎症性腸疾患のリスクが高まる

去勢によって特定の自己免疫疾患のリスクが増加したという報告もあります。アトピー性皮膚炎、自己免疫性溶血性貧血、アジソン病、甲状腺機能低下症、免疫性血小板減少症、そして炎症性腸疾患にかかる割合が、去勢した犬のほうが高かったのです。


・食欲が増し、太りやすくなる

去勢手術後は食欲が増し、太りやすくなったりします。獣医師の推奨する去勢した犬用のドッグフードに変えるなどで積極的な予防が必要です。



飼い主にとっての犬の去勢のデメリットは?

去勢をしたことで、初めて行く場所や大きな音、知らない子どもや犬に対して不安を感じやすくなります。時には、爪切りや動物病院での診察の際にも恐怖心を抱く犬もいるようです。

また去勢手術によって特定の疾患へのリスクが高まる犬種は、対応や治療費など負担が大きくなる場合もあります。

犬の去勢手術の内容とは?

動物病院にいる犬去勢手術の詳細は動物病院や獣医師の方針によって異なりますので、詳細はかかりつけの獣医師と相談してください。以下は一般的な手術の流れです。


1.去勢手術の前に、問診などの身体検査や血液検査を行います。さらに、必要に応じてレントゲン検査や超音波検査をするケースもあります。


2.去勢手術は、まず犬に全身麻酔をかけ、陰嚢を切開した上で中にある精巣を摘出し止血、縫合といった流れで行います。


3.手術時間は30分~1時間程度で、麻酔が完全に抜けて意識が戻り、体調に問題がなければ日帰りができる病院もあります。

犬の去勢手術は何歳までにするべき?

ドーベルマン去勢時期の基本は生後6ヶ月以降から10歳未満

犬が去勢手術をする年齢は特に決まっていませんが、生後6ヶ月以降、10歳未満が望ましいとされています。しかし、デメリットでご紹介した関節疾患やがんのリスクが高まる一部の犬種では、もっと成長してからの去勢や、そもそも去勢しないことが推奨されています。去勢手術をするタイミングは獣医師とよく相談してから決めましょう。


・関節疾患やがんのリスクにより、去勢しないほうがよい犬種

ドーベルマン


・関節疾患やがんのリスクにより、23か月齢以降の去勢が推奨される犬種

バーニーズ・マウンテン・ドッグ、ボクサー、ジャーマン・シェパード、アイリッシュ・ウルフハウンド、スタンダード・プードル


・関節疾患やがんのリスクにより、11か月齢以降の去勢が推奨される犬種

ビーグルボーダー・コリー、ボストン・テリア、ゴールデン・レトリバー、ミニチュア・シュナウザー、ロットワイラー



10
歳以上の去勢手術は可能?

健康状態が悪くない場合は、10歳以上になってからの去勢手術も可能でが、術後の回復に時間がかかったり、合併症のリスクが高まったりする恐れも。飼い始めた初期から計画をし、できれば犬がシニアに差し掛かる前までに去勢できるよう計画しておくのがベストでしょう。

犬の去勢手術の費用は?

犬の医療は自由診療のため、動物病院によって価格設定はさまざまですが、去勢手術にかかる費用の目安は以下の通りです。

小型犬:30,000円~50,000円程度
大型犬:50,000円~70,000円程度

これは手術費用に術前検査や麻酔代、入院費、退院時に処方される薬や、エリザベスカラーなどを含んだ金額です。手術そのものの費用は小型犬で15,000円~30,000円程度です。体格に比例して価格が上がるため、大型犬はもう少し高くなる傾向にあります。手術予定の病院に事前に問い合わせると安心でしょう。

犬の去勢手術のリスクは?

犬の去勢手術には麻酔合併症のリスクがある

去勢手術のリスクでもっとも考えられるのは、麻酔による合併症です。麻酔合併症が引き起こされると低血圧、心拍数の低下、呼吸不全、体温の低下の可能性があります。また、術後の合併症には誤嚥性肺炎、小脳機能障害などが生じる可能性があります。

麻酔による死亡のリスクは、犬全体で見ると約0.2%と言われていますが、健康な犬だと0.05%と低くなっています。

麻酔リスクは犬種や体重にも関係します。特に気をつけたいのは短頭種(パグ、ボストン・テリア、フレンチ・ブルドッグなど)です。鼻の構造から、軌道閉塞を起こしやすい傾向にあるからです。また、グレーハウンド、痩せていて筋肉質の犬種(アフガン・ハウンド、ウィペット、ボルゾイなど)、ボクサーはそれぞれ麻酔の効き方が違うとされています。

さらに、体重5kg未満の小型愛玩犬種と12歳以上の老犬はリスクが高いとされています。

犬の去勢手術後のケアや注意点は?

エリザベスカラーをつけた犬犬の去勢手術後の傷口のケアは?

去勢手術が終わったら、傷口を犬に舐めさせないことが非常に大切です。傷口を舐めることで治癒が遅くなり、傷口が開いてしまう可能性があります。舐めるのを防ぐために、エリザベスカラーを68日間は着用する必要があります。


去勢手術後、犬は眠くなりがち?

去勢手術をした当日の犬は麻酔の効果で眠くなりがちで、情緒が不安定になる恐れもあります。手術後は暖かい場所で静かに休ませてあげてください。


犬の去勢手術後の食事は?

去勢手術をしたことで食欲がなくなる犬もいますが、その場合も見守ってあげましょう。ただし、いつでも新鮮な水は飲めるようにしてあげてください。

食欲がない場合は一度にたくさん食事を与えるのではなく、食べ物と水分を少しずつ頻繁に与えてみてください。通常は2448時間で食欲が戻ります。ただし、犬が去勢手術後48時間以内に食事をしない、動こうとしないといったことがあれば、すぐに病院に相談してください。



犬の去勢手術後、散歩はいつからできる?

散歩は早ければ手術の翌日、通常は3日後くらいからできるようになりますが、数日間は術後の痛みがあるため、距離は少しずつ伸ばすのが理想的です。1週間後の再診で獣医師からOKが出るまでは縫合された部分は清潔にし、濡らしたり泥がついたりしないよう気をつけてください。

もしも手術した部分が腫れていたり、陰嚢に変色があったりした場合には、早急に病院で相談するようにしましょう。

犬に去勢手術をするかしないか、どう選択すべき?

攻撃的な犬去勢手術をするかどうかを最終的に判断するのは飼い主です。去勢手術にはメリットもあればデメリットもあります。去勢をすることで健康へ害をもたらす恐れもありますが、去勢しないことで病気にかかるリスクが高まるという面もあり、一概に「去勢しましょう」もしくは「しないでおきましょう」というのは難しいです。

ただし、去勢していない雄犬は、子どもや見知らぬ犬に攻撃的に振る舞う危険性があるという点だけは強調しておきます。最悪の場合、事故に至ることも考えられるでしょう。

去勢をするかどうか迷われている方は、こうした点を踏まえて、愛犬のことをよく知っているかかりつけの獣医師とよく相談し、選択しましょう。


第2稿:2021年2月15日更新
初稿:2020年12月30日公開

※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家のコメント:

雄犬は去勢をすることで攻撃的な性格が抑えられ、精巣がんをはじめとする病気にかかるリスクを下げることもできます。一方で、去勢をしたからこそ起こり得る弊害というものも存在しますので、去勢をするかどうかは獣医師さんとよく相談した上で決めてください。

監修/茂木千恵先生(獣医師)

ヤマザキ動物看護大学准教授。博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う。フジテレビ系列「モノシリーのとっておき」、日本テレビ系列「志村どうぶつ園」などに動物行動学コメンテーターとして出演。雑誌「Shi-ba」(辰巳出版)などの記事監修も多数担当している。

監修者の他の記事一覧


関連リンク

著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

詳しく見る

この記事に関連するキーワード