犬の歯磨きのやり方と頻度は?嫌がる際の対処法も解説【獣医師監修】

犬の歯磨きのやり方と頻度は?嫌がる際の対処法も解説【獣医師監修】

病気・健康

2022年11月25日 更新 (2020年02月28日 公開)

chicoどうぶつ診療所所長。体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、往診・カウンセリング専門の動物病院を開設。

犬の歯磨きのやり方と頻度は?嫌がる際の対処法も解説【獣医師監修】

犬に歯磨きは必要?

犬の歯磨きのやり方と頻度は?嫌がる際の対処法も解説【獣医師監修】犬の口腔内はアルカリ性です。これには糖が溜まりにくく虫歯が増えにくいというメリットがある反面、おおよそ35日程度で歯垢が石灰化し、歯石が作られるデメリットがあると言われています。歯石には大量の雑菌が含まれていますので、食事をするたびに口内の雑菌が体内に入り、場合によっては臓器に障害を起こしてしまうことがあります。これを防ぐためには、毎日の歯磨きを行って、しっかり口腔内のケアをしていくことが重要です。

犬の歯磨きはいつから始めたらいい?

なるべく早い段階から口周りに触ることに慣れさせていったほうが良いので、家に迎えて環境に慣れてきたらスタートしてみると良いかと思います。時期が早いに越したことはありません。

犬の歯磨きに必要なアイテムは?

人間が歯磨きをする時に歯ブラシが必要なように、犬の歯磨きにも必要なアイテムがあります。どういったものが必要なのか見ていきましょう。

犬用歯磨きシート(ガーゼ・コットン)

初めから歯ブラシを使うのは難易度が高いため、まずは指に歯磨きシートを巻き付けて歯を擦るところから始めてみると良いと思います。天然素材を使用しているもののほうが、体への負担は軽いでしょう。

犬用歯磨きペースト・ジェル

もし、シートの使用が難しい場合はペーストやジェルを指につけて舐めさせ、少しずつ歯肉を触ってみたり、歯を触ってみたりして、まずは口腔内に触れられることを慣れさせるのも良いでしょう。

犬用歯ブラシ

歯の表面の汚れ、ぬめりを取るのに効果的なのはやはり歯ブラシになります。ヘッドが小さいものや大きいもの、歯ブラシ自体の厚さや毛の長さ、硬さによっても好みが分かれます。まずはいくつか種類を用意して、愛犬が嫌がらないものを選びましょう。

ご褒美のおやつ

最初は口を触らせてくれるようになるところからのスタートになるので、口を触られるとおやつがもらえるという条件付けをしていくことで、少しずつ歯に触れられるようになり、歯ブラシなどを使用できるようになってきます。

犬の歯磨きをする前に、まずは口を触られることに慣れさせる

犬の歯磨きのやり方と頻度は?嫌がる際の対処法も解説【獣医師監修】犬の歯を磨きたいと思っても、いきなり歯ブラシを当てて磨いてしまうと犬も驚いてしまいます。歯磨きをする前にまずは口を触られることに慣れさせる必要があります。以下のような順序で段階を経て慣れさせるようにしましょう。

1.味付きの歯磨きペーストやジェルを舐めさせる

無理にペーストやジェルを舐めさせようとすると指を噛まれてしまうこともありますので、愛犬が好きな味を選んで、決して無理強いしないようにしましょう。

2.口元にタッチする

1がクリア出来たら、口元を触ってすぐにおやつを与え、口元を触られると良いことがあるという条件付けを行います。

3.歯や歯茎にタッチする

2がクリア出来たら、唇をめくったら褒めておやつを与えるという動作を繰り返し、慣れてきたら歯茎にタッチしておやつ、次は歯にタッチしておやつ……という風に段階を踏んで進めていきましょう。

4.口の中に指を挿入する

3がクリアした段階で口や歯に触れることにほとんど問題ないかと思いますが、3の時よりももう少し奥まで指を挿入し、すぐにおやつを与えて条件付けを行います。

5.歯磨きシートで歯を磨く

指の挿入に慣れてきたら、指に歯磨きシートやガーゼを巻き付けて、歯の表面を拭う動作に慣させていきます。ここで無理強いをしてしまうと抵抗感が生まれてしまい、振り出しに戻ってしまうため、もし犬が嫌がってしまったら一旦中断し、気持ちをリセットしてから再度行いましょう。

6.歯ブラシに慣れさせる

歯ブラシを歯茎にあててご褒美、歯にあててご褒美……を繰り返し、嫌がらなくなったら、歯の表面を磨いてご褒美を与えるという形で進めていきます。

犬の歯磨きをする方法は?

犬の歯磨きをする際には以下のような流れで試してみてください。それぞれどういった点に気をつければいいのかを解説していきます。

1.歯ブラシに歯磨きジェルをつける

まずは、歯ブラシに歯磨きジェルをつけます。愛犬が好きな風味のものを使用するのがおすすめです。歯ブラシを持つ際は動きをコントロールしやすい鉛筆を持つような持ち方をすると良いでしょう。

2.犬の口元にタッチする

犬に「マテ」をさせた状態でゆっくりと口元にタッチするようにしましょう。その際、犬にジェルを少し舐めさせて安心させるのも効果的です。抵抗なく触らせてくれるようであれば、次のステップに進みましょう。

3.歯ブラシを見せて、ご褒美を与える

犬に歯ブラシを見せて、ご褒美を与えましょう。そうすることで歯ブラシに慣れさせるだけでなく、歯ブラシを見せると喜んでくれるようになります。

4.歯ブラシを見せながら、口唇をめくる

歯ブラシを持っていない手で口唇をめくりましょう。初めは抵抗感を示すかもしれませんが、歯ブラシに慣れさせて少しずつめくる時間を伸ばしていくようにしましょう。

5.歯ブラシを口に入れて、歯に当てる

口唇をめくった状態で、歯と歯茎のあいだに歯ブラシを当てましょう。当て方は歯と歯ぐきの境目に45度の角度で、100g程度の力加減当てるのが適切と言われています。力を入れて当ててしまうと歯ブラシの先が折れ、適切に磨くことができなくなります。

もし、磨くことを嫌がってしまったら無理に続けず、そこですぐに終了にします。犬に歯磨きが嫌なものという認識を植え付けないように気を付けましょう。

6.歯ブラシでやさしく歯を磨く

歯ブラシを横方向に少しずつ動かして歯と歯茎のあいだをやさしく磨きます。犬のストレスのことを考え、1か所を30秒、長くても1分ほどで手早く磨きましょう。まだ歯磨きに慣れないうちは1か所磨くたびにご褒美を与えます。少しずつ歯磨きをする時間をのばし、全体を磨けるようになるまで続けましょう。

歯磨きの順序としては、まず上顎の前歯の外側、下顎の前歯の外側、その後に上顎の臼歯の外側、下顎の臼歯の外側、そして最後に上顎・下顎ともに内側(裏側)の順に磨いていくのが良いでしょう。

ちなみに、犬の歯の中でも第4前臼歯は一番汚れがつきやすいと言われています。この歯は犬歯の奥にあたる場所にあり、食べ物を切ったり、砕いたりする最も機能的な役割を果たしています。磨きにくい場所なので、無理強いは禁物ですが意識して磨くようにしましょう。

犬の歯磨きをする際の注意点は?

無理な姿勢を取らせたり、歯磨きを無理強いすると、飼い主との信頼関係が崩れてしまったり、体や心に負担がかかり別の疾患を招く恐れがあります。犬も飼い主もリラックスした状態で、落ち着いた環境で行うようにしましょう。上手に磨かせてくれたら、おやつをご褒美として与えることで歯磨きを楽しいことと認識してくれます。

犬の歯磨きの頻度は?

犬の歯磨きのやり方と頻度は?嫌がる際の対処法も解説【獣医師監修】前述しましたが、犬は歯垢から歯石に変化する時間が人間よりも短いと言われています。犬の歯磨きは、可能な限り毎日行うようにしましょう。朝晩の歯磨きを行うことができれば非常に良い頻度で行えていると言えます。

犬が歯磨きを嫌がる際の対処法は?

犬が歯磨きを嫌がる時もありますが、そういった時にどんな対処をすればいいのかをご紹介します。

歯磨きを楽しいことだと思わせる

おやつを使って口を触れると良いことがある、歯磨き後には嬉しいことがあると認識させましょう。

声をかけてリラックスさせる

飼い主が緊張しているとその緊張が犬に伝わってしまったり、意気込みすぎてもびっくりしてしまったりする犬もいます。まずは飼い主がリラックスすることですんなり歯磨きをさせてくれる場合もあります。

疲れているタイミングを見計らう

疲れているときには嫌がる力もないので、歯磨きが行いやすいかもしれませんが、繰り返すことで飼い主の前ではくつろげないという精神状態を作ってしまう恐れもあるため、どうしても行わないといけない時以外は控えておきましょう。

犬が歯ブラシを嫌がる場合の代用品は?

犬の歯磨きのやり方と頻度は?嫌がる際の対処法も解説【獣医師監修】犬がどうしても歯ブラシを嫌がる場合、代用品を使って歯磨きをすることもできます。どんな代用品があるのか見ていきましょう。

ガーゼ

指に巻き付けて歯の表面を拭うことができます。ブラシを使う前の慣れさせる段階で使ったり、どうしてもブラシは難しいといった場合に使ったりします。ただし、誤ってガーゼを飲み込んでしまわないよう気を付けてください。

マウススプレー

歯磨きが出来ない場合、口腔内のケアとしてスプレーを使うことがあります。しかし、スプレーでは歯石・歯垢、歯のぬめりが取れるわけではないので、スプレーだけで口腔内の衛生を保つことは不可能です。

犬用歯磨きガム

ガムを噛むことによって、歯に付着した歯垢を落としたり、口臭が軽減するという効果が期待でいる一方で、ガムの成分が体に負担をかけてしまったり、ガムを丸飲みして胃腸に負担がかかることがあります。また、硬いガムを与えることによって歯が折れてしまったというケースもありますので、どうしても歯磨きやガーゼなどを使ってケアをすることができない場合に取り入れるのが良いでしょう。

犬用歯磨きシート

シート自体に口腔内ケア成分や口臭対策の成分が含まれているものもあります。ガーゼのように指に巻いて歯のぬめりを取り除く作用が期待できます。ガーゼ同様、誤飲に気を付けてください。

歯磨きおもちゃ(歯磨きトイ)

縄状のものなどで遊んでいるうちに、歯についた汚れや歯の隙間の汚れなどが落ちてくれる可能性があります。これも確実に口腔内全体をケアするというものではないので、あくまでも補助的なケアと捉えてください。また、木製のものやラバー製のものもあるので誤飲には注意が必要です。

動物病院で歯石除去をするという選択肢も

動物病院で歯石除去をすることもできます。どういった治療をして、費用はどの程度かかるのかご紹介します。

歯石除去の方法

麻酔をかけてスケーラーやペンチ、エレベーターなどといった抜歯に必要な道具を用いて口腔内の状態を整えます。ほとんどの場合は1度で歯石を取り切ることができないので、24回ほど分けて通うことになります。

歯石除去の費用

口腔内の状態によりけりですが、全て歯石取り切るとなると口腔内処置のみで概ね24万円程度と言われています。これに診察代や検査代、薬代などがプラスになる形です。もし、状態が非常に悪く、抜歯処置が必要となると、更に金額は高くなります。

犬が人間用の歯磨き粉を舐めてしまったら?

犬に人間用の歯磨き粉を使用することはできません。特にキシリトールが入っているものを舐めた場合には中毒症状が懸念されますので、舐めてしまった場合はすぐに病院を受診してください。キシリトールが入っていないものでも、犬にとって有害な成分が含まれている可能性が否定できませんので、病院を受診しましょう。