【獣医師監修】犬のてんかんの症状とは?種類や原因、発作が起きた時の対処法などについて解説

【獣医師監修】犬のてんかんの症状とは?種類や原因、発作が起きた時の対処法などについて解説

いつもと変わらぬ生活を愛犬と送っていても、何の前触れもなく発症してしまう「てんかん」。脳機能が原因の慢性疾患で、繰り返し起こる発作は飼い主さんにとっても大きな不安となります。いざという時に慌てないようためにも「てんかん」を理解し、愛犬が寿命を全うするよう努めたいものです。今回は獣医師の茂木千恵先生に犬のてんかんの症状や原因、発作が起きた時の対処法などについてお伺いします。

犬のてんかんってどんな病気?

犬のてんかん発作は人間の場合と同じく、脳の機能障害です。原因は脳神経の一時的な興奮によるもので、脳の一部分だけでなく脳全体に異常が及んでしまう場合もあります。主な発作症状は全身の痙攣や意識障害、脱力などで、興奮が起こる脳神経の場所によりみられる症状は変わってきます。発作の時間は、数秒単位から長くて23分ほどと言われています。

 

発作が起きていない状態は発作間欠期と言い、発作の数時間前に前兆として前駆徴候が見られます。個体によっては前駆徴候がない場合もあるので注意が必要です。発作が静まった後は、数分から数日間にわたり視力の低下や麻痺などが継続する場合があります。

 

てんかんはこのサイクルを繰り返し慢性化する病気です。少なくとも2回以上のてんかん発作が24時間以上の間隔が開いて起こる場合に、てんかんが疑われます。

犬のてんかんの発作は具体的にどんなものがある?

聴診器を当てられている犬

国際獣医てんかん特別委員会が提唱する症状分類によると、てんかんは全般発作と焦点性発作に大別されます。全般発作とは脳全域がいっせいに興奮する発作。一方、脳のある一部分でのみ発作が起こるタイプを焦点性発作といいます。それぞれ症状に違いがありますので以下で詳しく解説していきましょう。


全般発作

全般発作は体全体に発作症状が起こります。激しく痙攣し、その場合は最初から意識がないことが多いです。同時に失禁や脱糞を起こす犬もいます。特徴的な症状は「強直間代性発作」と呼ばれるものです。全身に力が入って固まったあと小刻みに震え始め、やがて脚を大きくバタバタと動かします。犬が眠りに入る際や寝起き、睡眠中に起きやすい発作です。

 

また、飼い主さんが気づきにくい症状として脱力発作があります。ふっと力が抜け、腰を落とすなどの症状がみられますが、すぐに元通りに動き始めるため発作だと気づかない飼い主さんも多いようです。


焦点性発作

脳の一部分に機能障害が起きる発作は焦点性発作です。発作が起きた部位に関する症状が見られ、意識をつかさどる部位の発作であれば失神、運動機能を持つ部位なら痙攣、視覚に関連する部位は幻覚などが現れます。はたから見ると気づきにくい症状もありますが、幻覚や幻聴が生じていると愛犬の様子も変わるはずなので、普段との違いをじっくり観察しましょう。

 

また、焦点性発作は周囲の脳神経に広がっていく可能性があり、その場合は少しずつ症状も変化していきます。

犬のてんかんの種類は?

現在は病因によって特発性(とくはつせい)てんかんと構造的てんかん、反射性てんかんのいずれかに分類しています。病因を特定する方法は、血液検査や神経学的検査、聴診、エコーなどが代表的な方法です。原因が特定できない場合は追加でMRI撮影や脊髄液性状検査などの精密検査をおこなう場合もあります。


特発性(とくはつせい)てんかん

特発性てんかんの明確な原因は不明です。のちに説明する構造的てんかん特徴がみられない場合は、特発性てんかんとみなされています。また、遺伝的要因があり、親犬や兄弟犬で発作がある犬は特発性てんかんの可能性が高いです。

 

困ったことに特発性てんかんは発作がおさまると、身体検査や神経学的検査をおこなっても異常が見つからないことはよくあります。発作直後の脳波で異常が見つかったり、親や兄弟にてんかんを持っていたりすることなどの情報が判断材料となります。


構造的てんかん

構造的てんかんは脳のMRI検査や精密検査により、脳に障害を与える具体的な要因が見つかった場合に診断されます。主な要因は脳内の血管障害や炎症、感染症、外傷、水頭症などの脳奇形、腫瘍などです。

 

症状は全身の痙攣だけでなく、体の一部の痙攣やよだれが出るなどの症状も含まれます。


反射性てんかん

ほかには、特定の刺激により発症する反射性てんかんがあります。発作の刺激となるのは、音や光の点滅などが多いです。特定の刺激にのみ誘発されるてんかんなので、環境を見直せば発作の頻度を減らせる可能性もあります。例えば花火の音が発作の刺激として疑われるのであれば、避けるように行動するなど原因を排除することが大事です。

犬のてんかんの原因って?

犬のてんかんが起きる原因は、大きく2つの要因に分けられます。前でも触れましたが、1つは特発性てんかんに分類される遺伝性の要因です。遺伝的に脳の神経興奮が起きやすい性質を持っていると、てんかんを発症する確率が高くなります。

 

遺伝性てんかんを発症しやすい犬種は、ラゴット・ロマーニョ、ベルジアン・シェパード、ローデジアン・リッジバッグなどです。次に発症の可能性が高い犬種はシェットランド・シープドッグ、スタンダード・プードル、ボーダー・コリー、ラブラドール・レトリバーなどで、犬種内での発生率は2%以上。つまり50頭に1頭は発症する計算です。ただ、遺伝はあくまで可能性の話であり、明確な理由が断定できないと言われています。

 

2つ目は脳や体の病気により起こるため、明確に理由がわかる要因です。先ほど説明した構造的てんかんに分類されます。主な原因は交通事故などによる外傷やその後遺症、脳腫瘍や脳炎などの病気などです。MRI検査などをおこなうと目で見てわかるような傷や障がいが脳にあります。

犬のてんかんの発作が起きたときの対処法は?

階段の前にいる犬もし、てんかん発作が起きてしまったら、愛犬に怪我がないよう発作中は危険なものやほかの動物などから遠ざけましょう。階段の近くにいる場合は、落ちてしまわないかなども配慮します。苦しそうだからといって抱きかかえたり、呼吸を助けようと口にタオルを持っていったりする行為は危険ですので控えるようにしてください。とにかく触らないようにすることが大事です。


意識を失う発作の場合

発作中に意識を失っていると、愛犬はあまり苦しいという感覚はありません。しかし、体の疲れに違和感を感じたり、倒れてもがいたことにより体の一部を傷めたりすることも考えられます。しばらくは挙動がおかしい状態が続くかもしれませんが、飼い主さんは冷静を装い、愛犬が自分で落ち着きを取り戻すように促してあげてください。下手に手助けをすると攻撃的な行動を誘ってしまう危険もあります。


発作後に息が荒い場合

呼吸が浅くなっていたり、早くなっていたりする場合は、氷や水で頭を冷やしてあげるとよいでしょう。ただし、無理に水を与えないようにしましょう。意識が朦朧としていると、誤飲につながる可能性もありますので、水や食べ物は愛犬がしっかり落ち着いてから与えてくださいね。

犬のてんかんを防ぐ方法はあるの?

 構造的てんかんや反射性てんかんは原因を取り除くことで軽減できますが、遺伝的要因が大きい特発性てんかんは、実際のところ有効な予防法がないと言えます。

 

ただし、てんかん発作が起きてしまった場合、再発を防止する手立てはあります。てんかん発作が発症するたび、脳では少しずつ神経細胞が死んでいきますので、再発防止は重要です。繰り返し起こる発作で症状が重くなると、やがて投薬治療に反応しなくなる「難治性てんかん」に発展することもあるので注意してください。

 

てんかん発作の間隔が6カ月以上空いている場合は積極的な投薬治療をおこなわず、経過観察となる場合も多いです。その期間も発作を予防するため、日頃から対策を講じる必要があります。後ほど詳しくご紹介しますので参考にしてみてください。

犬がてんかんになってしまったらどうすればいいの?

診察を受けている犬もし突然、愛犬がてんかんを発症してしまったら動揺してしまうかもしれませんが、まずは飼い主さんが冷静になることが重要です。後の治療につなげるためにも、できればスマートフォンなどを使い発作の様子や持続時間を記録してみてください。てんかん発作が5分以上続く場合は後遺症のリスクが高まるため、発作の持続時間は治療方針を決める重要な材料になります。

 

発作が収まったら動物病院へ連れて行きましょう。獣医さんに撮った動画を見せながら、状況を説明しましょう。発作の状態や起きる前の行動、発作後の様子が説明できるようメモなどに残しておくとよいでしょう。これまでに同様の症状があったかや、脳の外傷、既往歴についても発作の原因を探る鍵となるため、まとめておくようにしてくださいね。


危篤状態の発作の場合

1日(24時間)以内に2回以上の発作がある群発発作や、1回の発作が5分以上も続くてんかん発作重積が見られる場合はかなり危険な状態です。重篤な脳障害が起こる可能性も高くなります。命に関わる危険がありますので、一刻も早く病院に連れて行きましょう。重症化リスクのある発作がすでに起きている場合はすぐに投薬治療が始まります。

愛犬がてんかんの発作を持っている場合、生活上で注意することはあるの?

普段通りの生活で構いませんが、特定の刺激によっててんかん発作が発症する場合は、その刺激を取り除くようにしましょう。発作が起きる前や直前に特徴的な動きをする犬の場合、飼い主さんが事前に気づけることも多いです。例えば、不安がってうろつく、どこかに隠れてしまうなどの行動が見られたときは、撫でたり抱いたりして愛犬の気持ちを落ち着かせるようにしてくださいね。気持ちを切り替えるような声がけも効果的です。大きな声での声かけなどは逆効果になりますので注意しましょう。

 

ドッグランやドッグカフェ、トリミングなどほかの犬がいる場所に出向く場合は、あらかじめスタッフさんにてんかん発作が起きる可能性があると伝えると事故防止につながります。水中で発作が起こると溺れるリスクがあるため、水遊びは避けたほうが賢明です。

犬のてんかんの治療内容とは?

薬を与えられる犬てんかんの治療は、ほぼ投薬治療がメインです。治療の目的はてんかん発作の頻度を減らすことです。6カ月に1回以上の短いスパンで発作が見られる場合は、すぐに投薬治療が開始されます。

 

使用されるのは抗てんかん薬です。脳神経に作用する薬で、1日に23回欠かさず服用してもらいます。少なくとも6カ月間は飲み続けて、薬が体に合うかを判断します。次の発作が起きなければ、薬が効いているということです。抗てんかん薬の服用を急にやめると、脳が異常に興奮してしまうことがあるので、飼い主さんの判断で使用中止はできません。不注意での飲み忘れにも気を付けてくださいね。


投薬以外の可能性

現在はてんかんに食餌療法が有効という説もあります。人間のてんかんの場合は高脂質で低非脂質の「ケトン食」による食事療法がありますが、犬の場合はMCTオイルを利用した食事療法です。実際に特発性てんかんの症状が軽減したという研究報告があり、犬のてんかん用に療法食が作られています。

記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。


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専門家のコメント

てんかんのなかでも特発性てんかんは原因が明確でなく、生涯付き合っていかなくてはいけない病気です。治療が一生続くので、終わりが見えなく疲弊してしまう飼い主さんも少なくありません。
ただし、正しい知識を身につけ、対処していけば健康な犬と同じ生活は送れます。決して抱え込まずにかかりつけの獣医さんと相談しながら、愛犬の健康を見守っていってくださいね。

監修/茂木千恵先生(獣医師)

ヤマザキ動物看護大学准教授。博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う。テレビ朝日系列動物特別番組 、日本テレビ系列「志村どうぶつ園」などに動物行動学コメンテーターとして出演。雑誌「Shi-ba」「プードルスタイル」(辰巳出版)などの記事監修も多数担当している。


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著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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