【獣医師監修】犬の血便の原因とは?考えられる病気と対処法、病院に連れていくべき危険な症状を解説

【獣医師監修】犬の血便の原因とは?考えられる病気と対処法、病院に連れていくべき危険な症状を解説

犬の便はその状態によって犬の体調を知ることができます。そのため日頃から便の状態をチェックしておくことが大切です。いつもと違う状態の便が出ていたら健康上なんらかのトラブルを抱えている可能性がありますが、特に血が混じっている場合は注意が必要です。今回はchicoどうぶつ診療所所長の林美彩先生に教えてもらった犬の血便の原因や対処法などについて解説します

犬の血便とは便がどういう状態のこと?

人の便ではたまに血が出ることがありますが、それは犬も一緒です。血便とは文字通り、便の中に血が混じっている状態を指します。便はバナナのような適度な柔らかさを持ち、全体の75〜80%ほどが水分である正常便であることが理想です。しかし、便は水分量により硬い便や軟便、水下痢とよばれるものに分けられます。血便はこれらのどんな状態の便でも発症する可能性があり、通常便であっても血が付着して出ることもあります。

一言に血便といってもその状態などから様々な原因が考えられます。まずは「どのような状態の便でも血便になることはある」ということを踏まえ、落ち着いて対応することが大切です。

犬の血便の原因とは?

では、どうして犬の便に血が混じってしまうのでしょうか。いくつかの原因があるのでそれぞれ解説していきます。

肛門付近のトラブルが原因の場合

犬が硬い便をしてしまう場合、排泄するときに力を入れた際に肛門付近の損傷が原因で血が付いてしまうことが考えられます。人間の場合は硬い便を出すことで肛門が痛むと痔になってしまいます。犬の場合は人と体の構造が違うため、痔になることはないと言われますが、硬い血便が出てしまうことで人間で言う痔に近い状態になることがあります。

ほかにも、肛門周辺のトラブルには肛門が狭くなり便秘になることで硬い便になってしまう「肛門狭窄」や、肛門周辺にある筋肉の隙間から脂肪やお腹の腸などの臓器が飛び出してしまう「会陰ヘルニア」といったものもあり、これらも血便の原因となる可能性があります。

ストレスが原因の場合

犬の心身にストレスがたまった状態は体内環境にも異常が生じます。そのため血便や下痢などの症状が見られる場合もあります。ストレスが原因の場合、犬は便秘やお腹を下して下痢になってしまうこともあります。また血便以外にも粘液が便に付いていることもあるので、愛犬の様子を見ながら健康状態をチェックしましょう。

犬がストレスになる原因は個体差により様々ですが、引越しやペットサロンに預けるなど周囲の環境の変化などによりストレスを受けてしまう場合があります。

誤飲・誤食が原因の場合

犬が何らかの異物を飲み込んでしまった際、便として出てくることがあります。しかし物によってはその途中で消化管の粘膜を傷つける可能性があります。これによって出血が生じ、血便がみられることもあります。もちろん異物を飲みこんだ場合は、血便が出る前に異常が起きることもあるので、愛犬が異物を飲み込んだ・何かしらの変化があった場合は、速やかに動物病院で処置を受けて下さい。

犬が血便を出した場合に考えられる病気は?

実際に犬から血便が出てしまった場合、どのような病気のリスクが考えられるのでしょうか。血便と言っても色によって考えられる健康上のリスクも異なります。ここでは、大きく鮮血便とタール便と呼ばれる黒色便に分けて考えてみましょう。

鮮血便とは

鮮血便とは肉眼でもはっきり血液が混じっていることがわかる便です。便の周りに鮮血が付いているだけでなく、便そのものに混じっている場合もあります。鮮血便が出るのは下部消化管や肛門付近からの出血が原因となります。場合によってはゼリー状の白い粘膜や粘液が付いていることもあります。

<鮮血便から考えられる犬の病気>

鮮血便から考えられる犬の病気は、人の痔のような肛門裂傷が代表例で、肛門周辺の出血によって血便となる場合があります。下痢が続くことによる粘膜の損傷なども考えられます。下部消化管による出血の場合は、便に血液が付着してから、短い時間で排出されます。消化の影響を受けることがほぼないため、赤い血便として排出されるのです。

その他には大腸の腫瘍(大腸ポリープ)や炎症性腸炎、食中毒や寄生虫・ウイルス感染なども考えられます。

タール便(黒色便)とは

タール便とは血便のなかでも黒い便を指します。また、濃い褐色として排出されることもあります。これは石炭などから作られるコールタールの色と似ていることから名づけられました。犬からタール便が出た場合は胃や食道、十二指腸など上部消化管からの比較的大量の出血が原因と考えられます。上部消化管が出血すると血液は長い消化管を経て排出されます。その際に胃酸や消化酵素の影響を長く受け、この過程で黒っぽく変色してしまいます。

ただし、血液の多い肉や魚を食べた場合、一時的に黒い便が出ることもあります。色などがタール便と似ているため、病気と勘違いしてしまうかもしれませんが、急に犬の便が黒くなった場合は直前の食事なども振り返ってみてください。

<タール便から考えられる犬の病気>

タール便の場合、考えられる犬の病気は胃や十二指腸の病気です。重度の胃炎や胃や十二指腸の潰瘍、腫瘍やポリープなどが原因となっている場合があります。また、寄生虫が原因によってタール便が出ることもあります。寄生虫の感染により消化管内で吸血するなどの悪さをした場合、その影響がタール便として現れる可能性もあります。

犬が血便を出した時、動物病院に行くべき危険な症状は?

犬が血便を出した時、驚いてしまうかもしれませんが異常のない一時的なものもあります。まずは犬の状態を観察し、以下の場合は早急に動物病院へ連れていきましょう。

犬をすぐに動物病院に連れて行くべき場合

犬を観察する上でまずは嘔吐の有無と体の状態、そして食欲の状態をチェックしましょう。特に元気がなくぐったりしている場合は明らかに体に異常がある状態なので、なるべく早く動物病院へ連れていきましょう。発熱などを起こしていることもあるので、注意深く普段の愛犬の様子と比較してみてください。

上記のような状態が見られなくても、数日間犬に血便の症状が見られる場合は動物病院へ連れていきましょう。

タール便が出ている場合は要注意

タール便が出ている場合は重い病気を患っている可能性もあります。直前の食事などで該当することがない場合は早めに動物病院に相談し検査を受けることをおすすめします。

血便を出した犬を動物病院に行く際に用意するものは?

動物病院に行く際は便の状態がわかるものを提出するのが理想です。直接便を持って行くのが一番いいのですが、難しい場合は写真や動画を撮っておくといいでしょう。来院までに期間がある場合はそれまでの変化なども説明材料となるので、犬の便の写真や動画を撮りためておきましょう。

犬の日常生活の変化を記録しておく

犬の日常生活での変化や通常の食欲なども記録しておきましょう。例えば散歩の時間や出かけた場所、来客や食事の変更などの生活環境の変化から血便が出る場合もあります。こうした生活習慣もしっかり記録し獣医師に伝えましょう。ちなみに、持病などで服用している薬などがある場合やワクチン接種の有無も診断の際の判断材料になります。獣医師との問診ではこのような点についても説明しておくことが大切です。

誤飲の場合は破片を確認

異物の誤飲によって血便が出ている時は、飲みこんでしまった物の破片がないかを探しましょう。もし残っている場合は動物病院へ来院する際に一緒に持っていきましょう。材料を把握できることで診察の際に役立ちます。

血便になりやすい年齢や犬種はあるの?

血便はどの犬にでも起こり得ることなので血便が出やすい犬種はありません。ただし、犬の年齢や体の状態によっては違いが出ることがあります。特に老犬(シニア犬)は体力が衰えており、様々な病気になるリスクも高いため血便が出る可能性も高くなります。反対に生まれて間もない子犬も、成犬と比べると体の発達や仕組みが安定していないため注意が必要です。そのため健康上のトラブルなどが起こりやすく、そのなかで血便が出てしまうことも考えられます。

犬が血便を出した場合、食事はどうするの?

犬が血便を出した場合はまず犬のお腹に配慮した食事を考えることが大切です。消化しやすさを考え、犬にやわらかい食べ物を与えてあげましょう。具体的にどのような食事を与えるべきなのかを解説していきます。

食物繊維やオリゴ糖などを与える

犬のためにやわらかい食べ物のほか、栄養上においてお腹に優しい食べ物を与えることも効果的です。例えば食物繊維が含まれている果物や野菜(りんご・キャベツなど)を適量与えたり、犬の腸内環境を整える仕組みを持つオリゴ糖を与えると、便通にも良い影響を及ぼします。

また、乳酸菌などの消化酵素のあるものを食事に加えることも方法のひとつです。症状によっては犬の体調に合わない場合もあるので、摂取させる場合はかかりつけの獣医師に相談するようにしましょう。

食事の量や温度にも気を配る

犬に与える時は、食べすぎにならないよう注意することも大切です。食べる量はいつもより少し減らしておきましょう。また、食事はなるべく人肌程度のものを与えてあげてください。

断食も効果的

血便を出しても愛犬が元気で食欲がある場合は断食をしてみるのも手段のひとつです。一食分だけ断食をすることによって、お腹の調子をリセットすることができます。

犬が血便を出した場合、普段の生活で気をつけることは?

犬が血便を出した場合は食事だけでなく日常生活でもお腹をいたわることを心がけましょう。特に冷えはお腹にとって大敵です。クーラー(冷房)を使用している室内では、犬のお腹が冷えすぎないよう、床にタオルケットを敷いたり、腹巻を巻いたりして冷えの対策を行いましょう。

また、水分補給も大切です。血便の下痢などの場合は体が脱水になっている可能性があります。適度な水分補給を心がけることは犬の健康を保つためにも重要なポイントです。

犬が血便を出さないようにする予防法は?

犬が血便を出さないようにするためには、まずは生活習慣が大切です。食事においては栄養バランスの優れたドッグフードや適度な水分補給を行うことで、体のコンディションを日頃から整えておくことが大切です。特に硬い便で肛門に傷が付いている場合は水分量を調節して便の硬さを調整するよう意識しましょう。また、ストレスをためこまないように散歩や遊びの時間を作り発散させることも予防につながります。

ワクチン接種を受けよう

ウイルス性の血便を防ぐには混合ワクチンの接種が重要です。ノミやダニ、フィラリアなどの予防接種を行うようにしましょう。また、動物病院では定期健診を受けることも可能です。健康診断によって血便の原因となる病気を未然に発見し、早期に治療を受けることができます。病気が深刻になる前に手を打つことは日頃の健康ケアで可能です。


第2稿:2021年2月17日更新
初稿:2020年12月1日公開

※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家のコメント

血便は一時的な軽いものから重度の病気の原因となるものまで様々です。散歩の途中やトイレ処理を行うなかで、便によって健康観察をすることができます。放置してしまうと、知らず知らずのうちに病状が進行してしまう可能性もあります。回復までに長い時間を要してしまうこともあるため、早期の対処はとても大切です。便の状態に異常がないか、突然の変化がないかなどを確認しながら、愛犬が健康な毎日を送れる環境を整えましょう。

監修/林美彩先生(獣医師)

chicoどうぶつ診療所所長。大学卒業後、動物病院やサプリメント会社勤務を経て、体に優しい治療法や家庭でできるケアを広めるため、2018年に往診・カウンセリング専門動物病院「chicoどうぶつ診療所」を開設。著書に「獣医師が考案した長生き犬ごはん」(世界文化社)。

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著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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