犬に噛まれたら?傷口への応急処置や注意したい感染症、病院の何科を受診すればいいのかを解説【獣医師監修】

犬に噛まれたら?傷口への応急処置や注意したい感染症、病院の何科を受診すればいいのかを解説【獣医師監修】

ちょっとしたはずみで可愛がっている愛犬やほかの人が飼っている犬に噛まれて怪我をするということがあります。そんな時はどのように対処すれば良いのでしょうか。今回は獣医師の茂木千恵先生に教えていただいた、犬に噛まれたときの対処法や注意すべき感染症、噛まれないようにするコツなどについて解説していきます。

犬が人間を噛む理由とは?

犬が人に噛みつく原因は大きく分けて3つあります。最も多いのが防御的な噛みつきです。身の危険を感じて相手に噛みつきます。次に多いのは、自己主張性の噛みつきです。自分の意思を通すために攻撃します。3つ目の原因は神経やホルモン異常による疾患です。脳や神経の興奮に異常が起こる「てんかん」や「水頭症」、ストレスを受けたときに出るホルモンが分泌過多になる「副腎皮質機能亢進症」など、原因として考えられる疾患は複数あります。

犬に噛まれた時に注意したい感染症は?

犬に噛まれてしまったら?_吠える白い犬犬に噛まれてしまうことでかかる可能性のある感染症はいくつかあります。命に関わる重篤なケースも考えられるので、注意しましょう。いくつか例をご紹介します。


破傷風

破傷風菌という細菌が神経毒素を出すことで、筋肉が強直したり痙攣したりします。土壌にある細菌なので地域によって危険度は異なりますが、危険地域では小さなキズでも感染の恐れがあるので要注意です。


狂犬病

狂犬病は、人を含めた哺乳類が感染し発症すると致死率100%の恐ろしい病気です。狂犬病に感染した犬に噛まれると、傷口からウイルスが侵入し感染しますが、日本では「狂犬病予防法」が施行され、1950年以降は予防注射や犬の登録が徹底されているため、発生例はほとんどありません。一方、海外の多くの国では流行しているところもあり、海外旅行の際には野良犬や小型野生動物などに噛まれないように注意が必要です。

 

破傷風菌に感染すると、潜伏期間(321日)の後、筋肉のこわばりを感じます。ここで治療しないで放置すると、全身の筋肉が一斉に痙攣し、呼吸困難等が起こり、窒息死することもあります。人が破傷風を発症した場合の致死率は1560%と、とても高いです。


その他の病気

他には、口腔内常在菌のひとつで、猫は7090%、犬は2050%保有するパスツレラ症があります。直後には腫れなかった場合でも2448時間後に傷口が傷みだして熱感を帯び、赤み、腫れが認められると、急性の化膿性疾患となります。免疫力の低下している人、高齢者は重症化しやすい傾向があるたため、軽傷でも疑われるようであれば外科系の病院を受診するようにしましょう。

 

またネコノミの一種に寄生するバルトネラ症なども感染する可能性があります。噛まれたあと、数日から2週間ほどの潜伏期間があり、傷口と周辺に湿疹、発熱、痛み、腫れなどが見られるようになります。重症化すると突然の痙攣発作や意識障害といった脳症を起こすこともあり危険です。これらはネコに噛まれた時に感染する確率の方が高い病気ですが、犬に噛まれた場合でも注意しておきましょう。

犬に噛まれた時の対処法と傷口への応急処置は?

気をつけていても犬に噛まれてしまうことはあります。その際にはどのような行動が求められるのでしょうか。噛まれた直後から病院を受診するまでの流れを以下にまとめましたので、参考にしてみてください。


犬から離れて安全を確保する

大声を出す、暴れるなどの大きな反応は犬の攻撃性を高めてしまいかねません。噛まれたら、犬を刺激しないように静かにゆっくり離れます。屋内でしたらトイレや別の部屋に犬を入れます。犬との間にバスタオルやブランケットなど大きな布状のものを防護幕として垂らし、追い出すといいでしょう。


噛まれた時の応急処置

安全が確保されたら、すみやかに噛まれた箇所を流水で洗い流します。傷口から出血していてもしっかりと5分間程度は傷口を洗うように流します。石鹸は破傷風やウイルスは死滅させるので、出来れば使用しましょう。洗浄が不十分の場合、傷口に入った病原体が血流に乗り感染症にかかってしまいます。洗い流した後に、清潔なガーゼやハンカチなどで傷口を押しながら止血します。


犬に噛まれた時、病院を受診するかどうかの目安は?

受診するかどうかは出血しているかいないかで判断すると良いでしょう。犬に噛まれて血が出ていたら、病原体が体に入ってしまっている可能性があるので、必ず病院に行きましょう。特に野良犬は、どんな病原体を持っているかわかりません。応急処置をした後、病院で診察を受けましょう。流血していないように見えても、24時間以内に腫れてくることがあります。3日以内に腫れてくる場合も病原体が感染している可能性が高いです。

 

治療がすぐに始められないと手術や部分の切除など重篤な状態に陥ることがあります。痛みやかゆみといった症状が局所 (噛まれたところ) だけでなく、ひきつけ・息苦しさなどの全身症状が出ている場合は、すぐに病院へ行ってください。

犬に噛まれたら、病院の何科を受診すればいいの?

犬に噛まれてしまったら?_警戒している犬犬に噛まれたときには、基本的に救急外来を受診します。電話で犬に噛まれたことを伝えると処置可能な医師が対処してくれます。病院での治療としてはまず創部を十分に洗浄してくれます。病院では、有効な抗菌薬などを投与される場合もあるでしょう。破傷風のワクチンを10年以上接種していない方、接種状況が不明な方には破傷風のトキソイドや免疫グロブリンという注射をすることもあります。感染の有無に関わらず、抗生物質が注射されるのが一般的です。

 

また、傷がひどい場合は犬の歯の残骸が体内に残っていることがあるので、レントゲン検査などで確認する場合もあります。すぐに縫合される場合と、殺菌できてから縫合される場合があります。傷が小さい場合も病院で十分に洗う必要があるので、ひどい傷口の場合は適切に処置してもらえる外科系病院を受診するといいでしょう。

犬に噛まれた後にやってはいけないことは?

噛まれたことで動揺し、誤った行動をとると事態をさらに悪くしてしまう場合があります。NGとなる行動を頭に入れておくことで冷静に対処できると思いますので、注意すべきポイントを押さえておきましょう。


噛んだ犬を叱るのは逆効果

不安を感じて噛む犬の場合、犬を追い詰める、大声で叱る、体罰を与えるなどすると、飼い主の脅威を感じて更に攻撃的になってしまい逆効果です。また、お仕置きとしていつものハウスに閉じ込めることもいけません。犬が安心して過ごすための場所を閉じ込めるために使うと、安心できる居場所として認識してくれなくなります。


汚染されている傷口を押さえない

傷口をすぐに手でふさぐのはいけません。血を止めたくてつい押さえたくなりますが、犬の歯に付着している病原体をそのまま一緒に体内に封じ込めることになってしまいます。まずは、十分な水量で洗浄してから止血しましょう。

噛まない犬にするためのしつけ

犬に噛まれてしまったら?_吠えている犬一般的に、犬は不安を感じたときに噛むことが多いようです。犬の表情やしぐさに不安そうに見える場合は、刺激を与えないようにしましょう。別の行動を促して、気持ちを逸らせる方法もあります。飼い主さんが緊張したり、逆に大声で叱ったりすることはかえって攻撃性を高めますのであくまでも低く落ち着いた声で号令を出しましょう。子どもやご高齢の方が近くにいる場合は、弱いほうに攻撃が及ぶこともありますので、安全対策は常に心がけましょう。

 

「噛み癖」をつけないためには、子犬の頃から人の体を噛もうとしたらすぐにやめさせることが大切です。「甘噛み」という言葉がありますが、これを許してはいけません。人の皮膚に歯を当てることは、いけないことと教えましょう。

 

すでに噛み癖がついている犬を止めるには、根気強く教えることが必要となります。噛もうとするきっかけを特定し、与えないようにする一方で、噛まないでいることを褒めたり、ご褒美を与えたりして、我慢することを学習させていきます。ただし、我慢できるようになったように見えても、過去に噛んだことがある犬はいつでも噛みつく可能性があるため、安全対策を怠らないようにしましょう。

他の飼い主の犬や野良犬に噛まれた時の対応は?

犬に噛まれてしまったら?_吠える茶色の犬他の飼い主の犬や野良犬に噛みつかれた場合、怪我の対応だけするという訳にはいきません。トラブルを大きくしないためにも適切な行動が求められますので以下を参考に正しい行動を行うようにしましょう。


連絡先の交換、保健所と警察への連絡

まず、噛んだ犬の飼い主の連絡先を確認し、保健所と警察に連絡を入れてもらっておくことが重要です。保健所には、噛んだ犬の飼い主に事故届を提出してもらいます。犬は狂犬病検査を動物病院でうけ、指導も受けてもらいます。噛まれたことによる後遺症は後で起こってくることもありますので、治療費や慰謝料などの金銭トラブルにつながらないよう、警察にも咬傷事故として忘れずに届け出ましょう。


保健所への届け出

人間が犬に噛まれたときというのは、まず、噛んだ犬の飼い主も、噛まれた人間も双方に保健所へ事故届の届出が課せられています。その時々によって詳しい手続き方法が異なるので、保健所や警察所の指示に従うようにしましょう。


野良犬に噛まれてしまったら

飼い主不明の犬にかまれた場合は、保健所が捕獲することになります。野良犬の場合、保持している病原体が傷口から噛まれた人に感染して、重篤な症状を引き起こすことも考えられます。保健所に場所と時間を伝えることも重要ですが、まずは救急外来を受診し、適切な処置を受けましょう。


第2稿:2021年4月15日更新
初稿:2020年12月7日公開

※記事内に掲載されている写真と本文は関係ありません。

専門家のコメント:

犬を飼っていると、自分やまわりの人に噛みついてしまうトラブルはいつでも起こり得ます。噛まれないためには犬にストレスを与えないようにすることが大切ですし、噛まれてしまった時も、大声や大きな動作で刺激しないよう静かに犬から離れ、安全を確保することが重要です。保健所などへの届け出も必要ですが、まずは噛まれた人への対応を優先しましょう。流血していたら、傷口を手で押さえることは厳禁です。流水で十分に洗い、感染症予防のために必ず外科系の救急病院を受診するようにしましょう。

監修/茂木 千恵先生(獣医師)

ヤマザキ動物看護大学准教授。博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う。テレビ朝日系列動物特別番組 、日本テレビ系列「志村どうぶつ園」などに動物行動学コメンテーターとして出演。雑誌「Shi-ba」「プードルスタイル」(辰巳出版)などの記事監修も多数担当している。

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わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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