2023年06月22日 更新 (2023年06月21日 公開)

コッカプーの愛犬・ビールくんと暮らす、アーティスト/イラストレーター大河紀さん
コッカプー(アメリカンコッカースパニエル×トイプードルのミックス)のビールくんのアカウントは、Twitterのフォロワーが8.8万人を超えています。自然体な姿がかわいすぎるビールくんの写真と、投稿に添えられたクスッと笑える文章が、なんとも魅力的です。

この投稿主は、ビールくんの飼い主であり、アーティスト/イラストレーターの大河紀さんです。
「犬との生活は本当に最高すぎます。いまだに、どの瞬間もかわいくて、あんなにもかわいい存在が、家でうろついていることに慣れません。毎日がハッピーです」
そう話してくれた大河さんは、インタビュー中もビールくんの様子をパシャパシャ。あふれる愛情が伝わってきます。
「ビールの写真を撮りすぎて容量が不足してしまったので、保存容量を2TB追加しちゃいました(笑)」

犬を初めて迎えた大河さんの想いとは? イラストレーター・大河さんならではの愛情表現や心境の変化を伺いました。
約2年の準備期間。愛犬を迎えるまでの不安と葛藤
大河さんがビールくんを迎えたのは、約3年前。新型コロナウイルスでの外出自粛がおこなわれていた時でした。小さな頃から犬がいる生活に憧れがあったものの、毎日夜遅くまで働く会社員生活では「幸せにしてあげられないから、いまじゃない」と気持ちを抑えていたそう。
コロナ禍での在宅ワークがはじまりしばらくした頃、大河さんはイラストレータとして独立することを決めます。同時に、犬との生活に向け、犬OKの物件へ引越したり、誤飲に気遣った家具を揃えたりと犬仕様にシフトしていきました。
一緒にいられる時間や経済面、住居環境など、あらゆる犬に関する情報を調べ尽くしたものの、それでも「ちゃんと幸せにできるか」不安に感じていた大河さん。パートナーさんがあと押しする形でワンちゃんを迎えることになりました。
「突然、今日からここがあなたの家です! というのは、人間のエゴでしかないと重々わかっていて。せっかく我が家に来てもらうからには幸せにしないと、とすごく責任を感じていました」
大河さんがワンちゃんを飼うために費やした準備期間はなんと約2年。「コッカプー」つまりアメリカン・コッカー・スパニエルとプードルを掛け合わせた犬種に出会ったのも、初めての人でも飼いやすい犬種についてたくさん調べて行きついた結果でした。
「コッカプー」は、人懐っこくて仲間意識が比較的強いといわれる犬種だといいます。
「個体差はもちろんありますけど、ビールを見てもらえればわかる通り、自立心があるというよりは、甘ったれって感じの性格ですね(笑)」
犬種を決めたら、次はブリーダーさんの元へ。新しく生まれたコッカプーの4匹の兄弟の写真を見せてもらい、直感で「この子がいいなあ」と大河さんが感じた子が、いまのビールくん。「今日は見るだけ」と足を運んだところ、4匹のうちビールくんだけが残っていたそう。
「“見るだけは絶対無理説”は有名ですよね。その場で即決でした!(笑)」
長い準備期間と、たくさんの情報収集、そして心の整理をつけて、満を持してビールくんをお家に迎えることとなりました。


毎秒可愛すぎる…愛犬の日記代わりにSNSアカウントを開設
「飼って3年くらい経ついまでも、こんなにかわいい子が家をうろうろしている幸せに驚いてしまうことがあります!」と興奮気味な大河さん。
ビールくんをお家に迎え「あまりにかわいい姿を残しておきたい!」という気持ちではじめたのが「@inu_beer」のSNSアカウントです。
「誰かに見てほしいというよりは、ビールのかわいいところやおもしろいところを残しておこう、くらいの感じではじめたんです」と大河さん。ここまでビールくんのファンがつくとは思ってもみなかったそう。

「最初は自分のアカウントに投稿をしていたんですが、このままでは量が多くて犬アカウントになってしまうと思って(笑)ビールを迎えた初日にすぐビール用アカウントを開設しましたね」
どの瞬間も見逃したくないほど、愛おしくて、写真を撮る手が止まらないのだそう。投稿からは、まん丸な瞳で見つめてくる愛らしさやお散歩を楽しむお転婆な様子、「こっちには歩きません!」とちょっと我が強い様子も伝わってきます。

甘えん坊のビールくんはお散歩と人が大好き。朝晩必ず1時間、毎日2時間近くも歩いているのだとか。撫でてもらえるチャンスを見つけると、自分から寄っていく姿勢に「かわいすぎる!」と大きな反響を呼んだこともあります。

普段から大河さんとパートナーさん、ビールくんと家族全員で散歩に出かけるのですが、先日は車で宮城まで行き山登りにチャレンジしたのだそう。
いつもはたくさん歩きたがるビールくんですが、なぜかこの日は早々にギブアップ。シティボーイの意地を見せつけてくる結果となりました。

「山以外はいつも通り元気いっぱい歩いていたので、ビールなりに満喫していたみたいです(笑)ブリーダーさんにも言われたのですが、意外と頑固なんですよね。そんなところもかわいすぎるんです」
愛犬が体調不良の夜。SNSに励ましの声やたくさんのアドバイス
ビールくんを迎える前に、たくさん情報を調べ、たくさん準備をした大河さん。それでもなお、飼ってみて「意外だなあ」と感じるのが食事のこと。獣医さんに診てもらったところ、体型や健康にはなんら問題はないようですが、ビールくんはかなりの少食です。
「犬ってみんな食べるのが大好きだと思っていたんですよね。まさか食べさせるのに苦労するとは」
ある日、少食のビールくんを心配する投稿をしたとき『うちの子もそうなんです』とコメントをくれる人が多くいました。
「本当に個体差があるんだなあと思ったし、他にも似たような子がいると思うとちょっと安心しましたね」
食事のこと以外にも、ビールくんが体調を崩した時の投稿には、他の飼い主さんたちから励ましの声や実体験からのアドバイスなど、たくさんのコメントが届いたといいます。

特に深夜帯に体調不良を起こすと、すぐには病院に連れて行けず飼い主が心細くなってしまうもの。SNSを通じて“犬を愛する仲間たち”が心の支えになってくれました。

「何気なくはじめたSNSアカウントだったけど、本当にやっていてよかったなあと思いました。本当に助けられました」
「妖怪の姿でも会いに来てほしい」愛犬への想いを作品に込める

大河さんのビールくんへの愛情表現は、SNS投稿だけにとどまりません。実は、大河さんが描く作品の多くにはビールくんをモチーフにしたものが多くあります。
「実物がかわいすぎるが故に、それを表現し切れるのか?」と悩み、1年ほどは犬の作品に手が出せずにいたのだとか。しかし、いざ1枚描いてみると、自分でも驚くほどに愛情があふれ出る様を実感したといいます。
「こうして目に見える形でビールへの想いを表現するのって、すごくいいなと思って。描いた作品を見ていると、私にとってビールはこんなに大事だったのかと自分でもびっくりするんです」
「愛情が重すぎて」と笑いながら話す大河さん。現在では年に1回程度、犬に関する絵を集めた個展をおこなっています。

昨年、2022年に開催された犬の妖怪をモチーフにした個展は、「たとえビールが亡くなっても、妖怪になってもいいからまた会いに来てよ」という気持ちを込めて描かれたもの。現在犬を飼っている人や愛犬を亡くした経験のある人には、きっと胸に響くものがあるはずです。
「ビールのアカウント経由で私を知って、個展に来てくれた人もいました。『私も妖怪の姿でいいからもう一度会いたいです』と、いまは亡き愛犬を思い出して涙を流してくれた人もいて……」

「やっぱり自分が経験したことからしか作品は生まれないんです」と大河さん。
自分よりも命が短く、大切な存在がそばにいることは、自身の考え方や作品に大きな影響をもたらすものだといいます。
「ビールという大切なもの、守らねばいけないものができたことは、私の制作活動において大きな変化でしたね。また、ビールと暮らし、自分よりも短い命と向き合うことで、1日1日に対する考え方も変わりました。明日ですら何が起こるかわからない。そんな生と死については、犬の作品以外でも、表現していきたいなと思っています」
「自分がこの子を幸せにする!」愛犬の存在が生きる糧に
飼いはじめる前は、「幸せにできるかな」と不安も感じていた大河さんですが、いまでは「私が幸せにする!」とその想いは決意に変わったそう。

「ビールは私にとって生きる糧ですね。ビールが死ぬまで私は絶対に死ねない」
ビールくんがいい気分で旅立てるように、それまで自分も精一杯生きていく。そう思うと、自然と生きる活力が湧いてくるといいます。
ワンちゃんは言葉が通じない存在だからこそ、どうしても人間よりも弱い存在になってしまうもの。出かける回数やご飯の量・質についても、すべて人間の采配で決まってしまいます。
「だからこそビールがハッピーでいられるように、最後まで責任を持ちたいんです」

生半可な気持ちでは飼えないけれど、ワンちゃんは、その分日々の幸せや人生における大きなインパクトを与えてくれます。
大河さんの、ビールくんがかわいすぎるという愛情と「自分がこの子を幸せにするんだ」という強い責任感が、ビールくんアカウントに惹きつけられる魅力なのかもしれません。