犬は牛肉を食べても大丈夫!生肉やアレルギーへの注意点やおすすめの与え方を解説【獣医師監修】

犬は牛肉を食べても大丈夫!生肉やアレルギーへの注意点やおすすめの与え方を解説【獣医師監修】

食べ物

2023年03月21日 更新 (2022年06月18日 公開)

かどのペットクリニック院長。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、特にこれらの分野は院内の診療の中でも力を入れている。

犬は牛肉を食べても大丈夫!生肉やアレルギーへの注意点やおすすめの与え方を解説【獣医師監修】

犬に牛肉を与えても大丈夫!

犬に牛肉を与えても大丈夫!牛肉は犬に与えても大丈夫な食材ですが、与える際にはいくつかの注意点があります。

 

犬は厳密には「肉食動物」ではない

犬は肉食動物のオオカミを祖先に持つため、牛肉を犬に与えること自体は問題ありません。犬の歯が肉を切り裂きやすいような尖った形になっているのもその名残りでしょう。ただし、厳密に言うと犬は「肉食動物」ではありません。遺伝学の観点からも、犬は祖先とされるオオカミとは別の動物に進化し、オオカミよりも雑食化が進んだとされています。オオカミと比較して体の大きさも小型犬であれば10分の1程度で、消化吸収の能力も低いものになります。野生のオオカミが生肉を食べるからといって、飼い犬にも生肉を食べさせてしまうと消化不良を起こすこともあるでしょう。

 

生のままではなく、必ず加熱して与える

レアステーキなど、一部が生の状態で食べることもある牛肉。しかし、生食用ではない市販の牛肉には、細菌や寄生虫などが含まれていることが考えられるので、犬には必ず加熱してから与えるようにしましょう。生肉に含まれている細菌はサルモネラやカンピロバクターなど、寄生虫はトキソプラズマやカンテツ、住肉胞子虫などが挙げられます。無症状であることが多いのですが、細菌や住肉胞子虫などは消化器症状につながる可能性が高いとも言われています。牛肉を生のまま与えてしまうと犬だけではなく、飼い主にも感染症のリスクがあるので生肉を与えることはやめましょう。

こういった理由から、まずは消化吸収能力の観点から犬に牛肉を与えても大丈夫そうかを個体別に判断し、与える時には細かく切って加熱するなど、大きさや調理の工夫が必要です。また、牛肉だけで必要な栄養をすべて補うことはできないので、基本的には総合栄養食(ドッグフード)をメインにし、牛肉はあくまでも食事の「トッピング」と考えましょう。

子犬やシニア犬に牛肉を与えても大丈夫?

個体差があるので、必ずしも「子犬やシニア犬だから、牛肉は食べてはダメ」とは言い切れません。しかし、子犬やシニア犬はあごの力や消化吸収能力が弱いことが多く、肉を噛み切って消化するのが難しいかもしれません。

また、子犬やシニア犬は体力を消耗しやすいです。万が一、牛肉を与えたことでひどい下痢嘔吐を起こした場合、脱水や食欲不振に陥って命にかかわる事態になってしまう可能性も。子犬やシニア犬に牛肉を与えることは、控えたほうがよいでしょう。

持病のある犬に牛肉を与えても大丈夫?

医師に指示された「療法食」によって体の健康状態を維持する必要がある時は、それ以外のものを食べさせるのは控えましょう。通常なら食べて害のないものであっても、「療法食ではないもの」を摂ることで病気が再発・悪化する心配があるためです。

 

例えば、消化器疾患を持つ犬は、牛肉に含まれる脂肪分の消化が難しく、それによって病気の悪化を招きかねません。結石症を持つ犬なら、食べものによって尿の成分などが変化するため、症状が落ち着いていても再発することがあります。

 

牛肉を食べてよいかどうかは病気の種類によっても異なります。まずは、かかりつけの獣医師に事前に相談してみましょう。

牛肉に含まれている栄養素は?

牛肉に含まれている栄養素牛肉には次のような栄養素が含まれています。それぞれ、どのような働きをする栄養素なのかを見ていきましょう。

 

たんぱく質

体の筋肉を維持し、増やすために必要な栄養素。

 

脂質

脂質の過剰摂取は肥満リスクを生みますが、良質な脂質をほどよく摂取することは皮膚や被毛の健康維持や改善が期待できます。

 

ミネラル

牛肉に含まれるミネラルは亜鉛、カリウム、マグネシウムなどで、どれも健康維持に欠かせない成分。例えば亜鉛は皮膚や被毛の状態をよりよくし、カリウムは体内の水分調節をする働きがあります。

 

ビタミンB群

ビタミンB群には数種類あり、それぞれ代謝を助けたり、皮膚や粘膜を健康に保ったりする役割を担います。欠乏することで体調不良や脱毛・貧血などの症状が現れることがあるので不足しないように摂取するべき成分です。

犬に牛肉を与える健康面のメリットは?

牛肉は与え方には注意が必要ですが、様々な栄養を含む食材です。犬が牛肉を食べた場合の健康上のメリットについて説明します。

 

品質の良いたんぱく源になる

脂質の少ない部位の牛肉は上質なたんぱく源となるので、体を構成する筋肉量を増やすのに有効です。とくに運動量の多い犬や成長期で筋肉量が増えつつある犬などは、良い体格づくりに役立つでしょう。

 

皮膚、被毛の健康維持

牛肉には皮膚や被毛の健康を保つのに必要な良質な脂質やミネラルを多く含みます。摂取することで毛艶が良くなる、被毛の質の向上する、といったことが期待できるとも言われています。

牛肉を食べてアレルギー症状が出る犬はいる?

牛肉は、犬のアレルギー発症率が高い食材です。鶏肉や豚肉が大丈夫でも牛肉だけはアレルギー反応を起こしてしまうこともあり得ます。これまでに牛肉由来の素材を含むおやつなどを食べた時に、皮膚の痒みや下痢嘔吐を起こしたことがあるなら、牛肉アレルギー反応が出る可能性が高いでしょう。注意して与えたほうがいいかもしれません。

 

犬の牛肉アレルギー症状は?

皮膚の赤み・痒み・下痢・嘔吐はよく見られるアレルギー症状と言われています。牛肉が触れた口周りなどや排便の際に便が触れる肛門周りの皮膚を痒がっていないかなど、観察しましょう。

 

犬の牛肉アレルギーを発症した場合の対処法は?

アレルギーを発症したら、いつ、どのくらい食べたのかを受診時に伝えられるよう把握し、動物病院をできるだけ早く受診しましょう。投薬などの対処をすぐにしてもらうことで、犬の負担を少しでも軽くしてあげたいところです。

犬に牛肉を与える際の一日あたりの適量は?

犬に牛肉を与える際の一日あたりの適量犬に牛肉を与える際の一日の適量は、食事全体量の20%程度と言われています。犬種別の目安量としては、以下の通りです。

 

超小型犬

約7.5〜15g(約大さじ0.5~1杯)

 

小型犬

約22.5g(約大さじ1.5杯)

 

中型犬(ビーグルや柴犬などの少し小さめの中型犬を含む)

約30g(約大さじ2杯)

 

大型犬

約37.5〜45g(約大さじ2.5~3杯)
大型犬でも中型犬に近いサイズの場合は37.5g(大さじ2.5杯)ほどに留めるほうが安心でしょう。

 

あくまでも目安であり、消化器官の強さや太りやすさなどには個体差があります。様子を見ながら調節をして与えるとよいでしょう。また、ダイエット中であれば牛肉を足した分、ドッグフードの量を減らすなど工夫が必要です。

犬に牛肉を与える際におすすめの調理法は?

牛肉は与えても大丈夫な食材ですが、与える際の調理の仕方には工夫が必要です。気をつけるべきポイントを確認しましょう。

 

細かく刻む

喉に詰まらせないように、細かく刻んであげることが大切です。

 

骨つき肉を与えるのはNG

骨を飲み込んでしまうと腸閉塞を起こしたり、先が尖った骨によって消化器を損傷したりする危険性があるので、肉を骨付きで与えることはおすすめできません。調理の際に骨がないかどうかを確認し、あれば取り除きましょう。

 

必ず加熱調理を行い、しっかりと中まで火を通す

牛肉を犬に与える時には「焼く」「茹でる」「蒸す」といった加熱調理を必ず行います。いずれの方法でも、しっかりと中まで火を通しましょう。以下のデータからも分かるように、意外にも余分な脂肪分は、「焼く」調理法の方が落ちるようです。しかし、犬に与える場合は、「茹でる」調理方法がおすすめです。理由としては、肉が硬くなりすぎず、さらに脂質も落とし、犬の消化吸収器官に優しい食材に仕上げることができるためです。ただし、「茹でる」方法ではカリウムやリンなどのミネラルの量が減るなどの変化があります。「蒸す」方法でも問題無いとされていますが、しっかりと中まで火を通す必要があります。この際も調味料は一切加える必要はありません。

 

牛肉のモモ

生のまま

牛肉のモモ

焼いた場合

牛肉のモモ

茹でた場合

たんぱく質

20.2g

27.7g

25.7g

脂質量

15.5g

22.7g

23.3g

カリウム

330

350

120

リン

170

190

120

(和牛肉モモ100gあたり)

参考:文部科学省食品成分データベース

 

火傷しないように冷ます

人間のように食べものを冷まして食べることは犬にとっては困難です。加熱調理した後は、火傷しないよう人肌程度まで冷ましてから与えましょう。

 

調味料は使用しない

犬に与える牛肉には塩やコショウなどの調味料を一切加えないようにしましょう。

 

メインの食事にせず、あくまでもトッピングとして与える

牛肉だけで犬の必要な栄養素をすべて摂取することは難しいです。完全栄養食であるドッグフードをメインの食事とし、牛肉はトッピングとして使うとよいでしょう。

犬に牛肉を与える際におすすめの部位は?

犬に牛肉を与える際におすすめの部位牛肉のなかでもバラやサーロインなど脂質が多い部位は、肥満リスクや消化器への負担が高くなるので、与える量や頻度は控えめにしましょう。一方、肩ロースやモモなどの脂質量が少ない赤みの部位は与えるのに適しますが、肉質が硬いのでできるだけ小さく刻むなど工夫が必要です。部位ごとの特徴や与える際の注意点を確認しておきましょう。

 

バラ

脂質量が多いため、与え続けることによる肥満のなりやすさと、消化器への負担により消化器症状を示す可能性があるため、与えることはあまりおすすめが出来ません。

 

サーロイン

バラに次いで脂質量が多いとされており、消化器症状につながりやすいため、あまりおすすめできません。

 

ロース(肩)

バラやサーロインに比べて脂質量が少ないため、与えるのには適していますが、赤みの硬めの肉になるため、できるだけ小さく刻むなど、与え方に工夫が必要です。

 

モモ

モモは赤みの肉で、牛肉の中でも脂質量が少ない部位のため、与えるのには適しています。比較的硬い肉なので食べやすいようできるだけ小さく刻むなど、与え方を工夫しましょう。

 

また、それぞれの部位ごとの脂質量の差は以下の表の通りです。犬に与える前に確認し、選ぶ際の参考にしてみてください。

 

種類

脂質量

バラ

50.0g

サーロイン

42.5g

ロース(肩)

36.5g

モモ

15.5g

(和牛肉100gあたり)

参考:文部科学省食品成分データベース

犬に牛肉を与える際の注意点は?

犬に牛肉を与える時に気を付けたいことについて、最後にまとめて見ていきましょう。

 

人間用の加工食品を与えるのはNG!

人間用の加工食品には犬が摂取してはいけない成分が含まれている可能性が高いです。例えば、ローストビーフ自体は与えても大丈夫でも、そのソースにタマネギやニンニクが含まれていることがあるので、安全を考慮して与えないようにしましょう。そのほか、ビーフジャーキーには添加物が含まれていたり、人間用の味付けが犬には濃く、ナトリウム過多になったりする心配もあるので犬に与えるのはやめましょう。

 

まずは少量ずつ与える

アレルギーの有無や消化機能には個体差があります。様子を見ながら、少量から与えてみましょう。少量でも下痢や嘔吐など普段と違う様子が見られたら与えるのを中止し、動物病院で診てもらってください。