鳴き声で分かる犬の気持ちとは?しつけと対処法についても解説【獣医師監修】

鳴き声で分かる犬の気持ちとは?しつけと対処法についても解説【獣医師監修】

病気・健康

2023年03月04日 更新 (2020年07月19日 公開)

博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究活動の傍ら、動物病院でもしつけや問題行動のカウンセリングを行う

鳴き声で分かる犬の気持ちとは?しつけと対処法についても解説【獣医師監修】

犬の鳴き声には必ず理由がある

犬が鳴くのは、いたって普通のことです。もともと犬は、牧畜や狩猟、そして防犯など、「人の役に立つため」に人間と生活するようになりました。吠える能力が高くなければ、求められる仕事ができません。つまり、犬はもともと、吠えることを能力として備え付けられた動物であり、犬が鳴くときは必ずその理由が隠れています。

犬の鳴き声1:大きな声でワンワン、キャンキャンと吠える理由は?

犬が大きな声でワンワン、キャンキャンと吠える理由

犬が「ワンワン」「キャンキャン」と大きな声で吠える理由は、「警戒している時」「興奮している時」「要求している時」の3種類があります。それぞれ具体的に紹介していきましょう。


警戒している時

愛犬がお散歩中に他の犬に吠えたり、自宅を訪れた見慣れない来訪者に対して「ワンワン」と吠えるのは、警戒心の表現です。自分のテリトリーに部外者が侵入してきたり、相手や犬に対して単純に怖いと感じているのです。

よく玄関チャイムが鳴ると吠える犬がいますが、これはチャイムの音に驚いているのではなく、「チャイムが鳴る=見慣れない人が来る」と今までの生活で学習しているため、吠えるのです。


興奮している時

犬は、嬉しいことや楽しいことなど、興奮している時に吠えます。例えば、お散歩や食事の時間など、自分にとって嬉しいことだと分かったときに「ワンワン」と吠える犬も少なくありません。


要求している時

犬はケージから出してほしい、飼い主の食事の際に分けてほしいと、吠えるケースもあります。これはいわゆる要求の気持ちで、どこかで「吠えれば要求が通る」と学習してしまった結果と考えられます。

犬の鳴き声2:高い声でクゥーン、キューンと鳴く理由は?

犬が高い声でクゥーン、キューンと鳴く理由

犬が高い声で「クゥーン」「キューン」と鳴く時は、「甘え、おねだり」「悲しさ、不安」などの感情を抱えていることがあります。それぞれ具体的に紹介していきましょう。


甘えたい、おねだりしたい時

「クゥーン、クゥーン」や「キューン、キューン」というような鳴き声で飼い主に近寄ってくるときは、甘えたい気持ちやおねだりの感情でいっぱいのときです。例えば、遊んでほしい、撫でてほしい、ごはんがほしい、などの感情の時、鳴いておねだりなどをしてきます。しかし、エスカレートしていくとワガママの領域に進んでしまう可能性があるため、そうならないように、気持ちは汲みつつもしっかりとルールを教えていく必要があります。


悲しさ、不安を感じている時

「クーン」などとかすかに鳴くときは、悲しさや不安を感じている可能性があります。鳴きながら震えていたりする場合は、恐怖心の表われです。このようなときは、その気持ちの元となっている原因について、思いつく限りリストにあげて、可能性の高い物から解決していく必要があります。恐怖の対象を取り除いてあげることは、犬が飼い主さんを信頼する大きなきっかけにもなります。

犬の鳴き声3:ワォーン、クォーンと遠吠えする理由は?

犬がワォーン、クォーンと遠吠えする理由

「ワォーン」「クォーン」という犬の遠吠えは、遠く離れたところにいる仲間とのコミュニケーションを取るためや、本能的な意味合いで吠えている場合があります。

コミュニケーションの手段

遠吠えには、オオカミ時代の名残として、遠くにいる仲間との連絡手段として行っていることがあります。飼い主を仲間に近いものと考え、飼い主の留守中に寂しさから飼い主に向けて遠吠えする犬もいます。

他に、救急車などのサイレンに反応して遠吠えする場合もあります。これは、サイレンの音が他の犬の遠吠えのように聞こえているという説があります。このように、遠吠えは犬の本能的な意味合いから行っていることがあります。


認知症の場合

高齢になって認知障害が現れている犬でも遠吠えすることがあります。認知障害が現れると同じところをぐるぐる回る、すぐに忘れてしまうなど様々な症状が現れますが、睡眠パターンが変化することにより昼間に寝てしまい、夜中に起きてきて吠え続けることがあります。

犬の鳴き声4:ウーッ、ガルルルと低い声で唸る理由は?

犬が唸るという行為は、威嚇とともに攻撃性のあらわれです。「ウーッ」や「ガルルル」という感じの声が出ます。このような唸り声と一緒に低いトーンで連続して「ワンワン」と吠えるときは、攻撃的な気持ちが強く、いわゆる臨戦態勢なので注意が必要です。

犬の鳴き声5:キャンと突然鳴く理由は?

犬が「キャン」と鳴くときは、体のどこかに痛みを感じていることが多いです。突発的にしっぽや足を踏まれたというようなときもあれば、病的な要因からくる痛みで「キャン」と何度も鳴くケースもあります。明らかな原因が思い当たらないのに頻繁に鳴くようになった時は病気やケガの可能性があるので、早めに病院へ連れて行ってあげましょう。

他には、他の犬への降参という意思表示や、助けて欲しいという気持ちの表現でキャンと鳴くこともあります。

犬の鳴き声が気になったり、ムダ吠えがひどい時のしつけ方と対処法

愛犬のムダ吠えがひどい時のしつけ方と対処法

犬の鳴き声に対するしつけは、原因により違います。それぞれ具体的にご紹介します。


警戒心や恐怖、不安から鳴いている場合

犬が警戒心や恐怖、不安から鳴いている場合は、その原因を取り除く、もしくは遠ざける・気持ちをそらすなどの対処が大切になります。お散歩中に他の犬が見えたら、行く方向を変えてみる、おやつやおもちゃを使って飼い主さんの方へ興味を向ける。来訪者の予定が決まっているのであれば、離れた部屋で落ち着いて過ごせるように配慮してあげましょう。サイレンなどの音に反応する場合は、部屋の防音を考えてあげるのもひとつの手段です。


寂しさから鳴いている場合

寂しさから、犬が鼻を鳴らしたり、遠吠えなどをしているのであれば、普段からスキンシップをしっかり取るようにして、安心感を与える必要があるでしょう。また遠吠えを始めたら声をかけて、飼い主に気を向けるようにすると、吠えることを止める犬も少なくありません。


要求や甘え、ワガママから鳴いている場合

これらの場合は、犬を忍耐強くしつけをしていきましょう。ケージから出たくて鳴き始めても、すぐにはケージから出さないように心がけましょう。「待て」「お座り」という号令の声かけを行い、飼い主の指示に従うことで、そのご褒美として出してもらえるというルールを学習させていきましょう。鳴いたからといって、自分の要求は通らないと学ばせていくことが大切です。従ったら、しっかりと褒めてあげましょう。


認知症が原因の場合

問題なのは犬が認知症の場合です。しつけることで鳴かなくなるというものではありません。ただ認知症と一括りにしても、病気などの痛みで鳴いている場合もあります。痛みがあるのであれば、治療が優先されます。その場合、まずは獣医師に相談し適切な治療を始めましょう。また老化への対応は長期間必要になります。飼い主さんをサポートしてくれるような訪問介護や在宅サポートなどに加えて、デイサービスやお預かりなどを実施している老犬ホームなどを検討するのもひとつの手段です。

認知症と診断されたとしても、視覚や聴覚の衰えで飼い主さんを身近に感じられず寂しさで鳴いていることもよくあります。犬の状態の変化をこまめに観察し、飼い主としてしっかりとスキンシップをとっていくと良いですね。


体力が余っている場合

体力が余っている時、犬は落ち着きなくうろうろと動き回ったり、物を壊すような問題行動をするだけでなく、吠えることもあります。また、散歩に行きたいなどの要求として吠える場合と同じように、退屈した犬は刺激が不足しているために吠えることがよくあります。この場合の吠え声は通常繰り返され、単調なリズムと抑揚の少ない吠え方で断続的に続きます。

留守番中の犬の鳴き声への対処法

留守番中など、飼い主の目が届かないタイミングで犬が吠えていることもあります。マンションなどの集合住宅に住んでいる場合は思わぬトラブルに巻き込まれる可能性もあるので注意してください。

留守番中の鳴き声が近所迷惑になることも

留守番中に退屈した犬が吠える場合、飼い主が対処できないので数時間続くことがあります。それによって、ご近所から苦情がきてしまうことも。迷惑問題から飼育放棄へと発展することがあり、予防や早期の対策が必要です。

 

また、飼い主の留守中に分離不安から吠え続けてしまうケースもあります。飼い主との分離が犬に強い不安を与えることが原因です。分離不安はそのままにしておくと進行して、家から脱出しようとして怪我を負う、飼い主が帰宅しても食欲不振が続く、嘔吐や下痢が起こるなどの心身への悪影響を生じます。

 

ほかにも、高齢になると高齢性認知機能低下のために吠えが見られることがあります。特に夜になったら鳴き始める「夜鳴き」が飼い主を苦しめますが、留守番中に吠えていることもあります。吠えすぎることで脱水したり、心臓に負担をかけたりと高齢動物の体に影響が出る可能性もあります。


留守番中に犬が吠えるのを防ぐには

まず、留守番の時にだけ吠えているか否かの確認が必要です。ペットカメラを利用して愛犬の留守中の行動をチェックしてみましょう。留守番の時に吠えている状況から原因を推定し、分離不安や高齢性認知機能低下が疑われる場合はすぐに獣医師に相談しましょう。留守番をさせる前に以下のような対策をすることもおすすめです。


・留守番させる前に運動させる

留守番させる前に充分な運動を提供することは、犬の退屈を防ぐのに役立ちます。朝に充分な運動をさせると(犬が帰宅後に水を飲んで、ベッドに直行し横たわるくらい)、日中に昼寝をしてすごす可能性が高くなります。散歩に充分行けなかった日は、持ってこいや宝探しゲーム、引っ張りっこおもちゃで遊ぶ、庭の周りでサッカーボールを追いかけるゲームなどをするのが良いでしょう。短いクリッカーなどを用いた号令とご褒美がセットになったトレーニングセッションは、犬の脳を使いながら肉体的に余剰なエネルギーを燃焼させることができて効果的です。

 

運動だけでなく、犬の脳にもリフレッシュが必要です。ご飯を上げるお皿を仕掛けおもちゃにしたり、散歩コースをもっと起伏の激しいルートに変更してみることを試してみてください。留守番中もおやつを詰めた仕掛けおもちゃか、噛めるおもちゃのなど複数のものをクレートやケージ内で遊べる状態にしておきましょう。


・ひとりでも落ち着けるスペースを用意する

ひとりにしたときに落ち着ける、安全なスペースを準備しておくことも必要です。クレートやケージは犬を安心させ眠りに誘うため、犬の退屈な吠えを防ぐのに役立ちますが、ひとりで家にいる間に物を破壊したり、逃走しようとした犬が危険な状況に陥るのを防ぐことにも役立ちます。なので、ケージの中にクレートをセットするのがおすすめです。クレートは屋根付きの体にフィットするサイズの物のほうが、より犬にとって落ち着く空間になります。ケージ内にはトイレと水も忘れずに用意しておきましょう。


第5稿:2021年11月19日更新
第4稿:2021年2月19日更新
第3稿:2021年1月27日更新

第2稿:2020年10月9日更新
初稿:2020年7月19日公開

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