犬も歯ぎしりをする?考えられる原因と対処法を解説【獣医師監修】

犬も歯ぎしりをする?考えられる原因と対処法を解説【獣医師監修】

犬が歯でカチカチと音を鳴らしているのが気になったことはありませんか? もしかするとそれは、犬の「歯ぎしり」かもしれません。歯ぎしりの原因は様々なものが考えられますが、人間と同じようにストレスが関係していることもあるので適切な対処が必要です。今回は、酪農学園大学獣医学群獣医学類 准教授・佐野忠士先生に教えていただいた、犬の歯ぎしりの特徴や原因、歯ぎしりをやめさせる方法などを解説していきます。

監修/佐野忠士(獣医師)

監修/佐野忠士(獣医師)

酪農学園大学獣医学群獣医学類 准教授。

酪農学園大学附属動物医療センター集中治療科診療科長。

 

日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)卒業。

東京大学大学院農学生命科学研究科獣医学専攻博士課程修了。

北里大学獣医学部や日本大学生物資源科学部 獣医学科などへ勤務を経験。

 

獣医師や博士(獣医学)のほか、テネシー大学公式認定『犬の理学リハビリテーションセミナー』CCRP、世界基準の心肺蘇生ガイドラインインストラクター(RECOVER)の資格保有。

幼い頃より無類の動物好きで、今も変わらず動物全般が大好き!  高度医療に興味を持ち、専門を突き進めていく中で、縁の下の力持ちとしての仕事に生きがいを持って励んでいます。今後、国家資格化される動物看護師の教育・育成をライフワークとして継続していきます!

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犬の歯ぎしりとは?

骨を噛む犬

一般的に「歯ぎしり」と表現される行為は、専門用語で「ブラキシズム」と呼ばれています。ブラキシズムとは、無意識のうちに行っている歯ぎしりや噛みしめなどの総称で、症状の違いなどによって以下の種類に分けられています。

 

タッピング

上下の歯をぶつけ合って、カチカチといった音を鳴らすタイプの歯ぎしりで、基本的に犬によく見られるのがタッピングです。恐怖やストレス、寒さなどからくる震えなどが原因で、噛み合わせの悪さが関係したものではありません。以下のクレンチングに比べて歯や顎に加わるダメージは少ないといわれています。

 

クレンチング

上下の歯を強く食いしばる動作で、「噛みしめ」とも呼ばれます。常時ぐっと歯を噛みしめて、歯や歯茎、顎などに大きな負担がかかるので、犬がこの歯ぎしりをしている場合は要注意です。脳神経の病気などの発作で見られる犬の歯ぎしりの仕方は、クレンチングに分類されます。人の場合、寝ている時だけでなく起きている時でも起こりえますが、自分では噛みしめていることを意識していないケースがほとんどです。

 

人間によく見られる歯ぎしりは、グライディング

上下の歯をすり合わせて、ギリギリといった音を鳴らすタイプの歯ぎしりです。一般的に人間の歯ぎしりというと、このタイプを指します。寝ているときに起こることが多く、無意識のうちに行われるので気づきにくいのも特徴です。犬の場合は、歯の先端がとがっているので、グライディングは起こらないと言われています。

 

「歯ぎしり」に近い「噛みしめる動作」も見られる

犬の歯ぎしりの定義は「2分以上動作が続くこと」とされています。そのため、短時間の歯の強い噛み合わせや不自然な咀嚼行動は、厳密には「歯ぎしり」ではありません。

 

歯ぎしりには当てはまらないこれらの動作を、この記事では「噛みしめる動作」と呼ぶことにします。短い時間でも「噛みしめる動作」が多いと感じる際には、その原因を考え、様々な面からアプローチしていく必要があります。

 

犬が歯ぎしりをする原因は?

犬が歯ぎしりをする原因としては、以下のようなものが考えられます。それぞれの詳細を見ていきましょう。

 

ストレス

原因のひとつとしては、ストレスから生じる歯ぎしりが考えられます。犬が感じるストレスは様々ですが、運動不足やコミュケーション不足などによる欲求不満、環境の変化や長時間の留守番による不安感などがストレスにつながることがあります。精神的な要因からくる歯ぎしりは、ストレスの原因をつきとめて取り除いてあげることが大切です。

 

恐怖

犬が恐怖を感じている場合に歯ぎしりを行うことがあります。日常的に歯ぎしりをしているなら、飼い主が犬の怖がるような接し方や行動をしている可能性を考えましょう。

 

寒さによる震え

犬が寒くて震えているときに、タッピングの歯ぎしりを行うことがあります。この場合は、犬の生活環境を整えてあげる必要があります。

 

犬の「噛みしめる動作」の原因

歯ぎしりとは違う、一時的な強い歯の噛み合わせや不自然な咀嚼行動などの「噛みしめる動作」が見られる場合は、病気や成長期の不快感などの生理的な原因であることが多いです。主な原因としては以下のようなものが考えられます。

 

歯周病や虫歯など(歯の痛みからくるストレス)

歯周病による歯茎の腫れや出血などの違和感、虫歯による痛みがあるときに、歯を食いしばることがあります。また、病気に伴うストレスなどが原因で歯を食いしばることもあります。

 

脳神経の病気(てんかん)

てんかんなど脳神経による病気による発作で、クレンチングが認められることがあります(ただし、発作で2分以上クレンチングし続けることはほぼありませんので、厳密な意味での歯ぎしりとは異なります)。てんかんは、犬にはよく見られる発作で、歯を強く噛み合わせたり、全身のけいれん、同じ場所をぐるぐる回る、よだれを垂らす、失禁するなどを引き起こしたりします。

 

食べ物が歯にはさまる

食事のあとなど、食べたフードが歯の間にはさまってしまい、それが気になって歯をカチカチ鳴らしたり、噛みしめたりする行動が見られる場合もあります。

 

噛み合わせが悪い

犬の噛み合わせが悪く、顎や口に不快感を感じていて、噛みしめているかもしれません。

 

歯の生え変わりの不快感

子犬の場合は、歯が生え変わるときに不快感から歯の食いしばりやこすり合わせるなどの動作をすることもあります。一時的な症状なので特に問題はありません。

 

犬の歯ぎしりの対処法は?

犬の歯ぎしりをやめさせる方法

犬の歯ぎしりをやめさせる方法は、歯ぎしりの原因によって変わってきます。考えられる原因を探り、それに応じた対処法を行いましょう。

 

ストレスを軽減させる

ストレスが原因で歯ぎしりをしている場合、まずは犬が何に対してストレスを感じているのかを明確にする必要があります。運動不足や欲求不満であれば散歩ドッグランで遊ぶなど運動量を増やしたり、飼い主とのスキンシップの時間を増やしたりしてあげるとよいでしょう。環境の変化や長時間の留守番などからくる不安感であれば、飼い主が愛犬と共に過ごす時間を増やしたり、声かけをしてあげると効果的かもしれません。それでも改善されない場合は、向精神薬などを用いて改善を試みていきます。

 

寒さを改善させる

寒さによる震えが歯ぎしりにつながることもあります。冬場の寒い時期は特に、部屋の温度管理をしっかりと行い、犬が寒さを感じない温度設定にしてあげましょう。

 

子犬の歯ぎしりにはかじってもよいおもちゃを与える

歯の生え変わりによる不快感から生じる歯ぎしりは、かじっても問題ないおもちゃを与えて不快感を和らげてあげるとよいでしょう。

 

犬の「噛みしめる動作」への対処法

「噛みしめる動作」は歯ぎしりとは違うので、対処法も上記とは異なります。逆に、犬が歯ぎしりをしている場合、「噛みしめる動作」の対処法を施しても歯ぎしりは解消されないので注意しましょう。

 

病気・怪我がある場合

病気が原因で「噛み締める動作」が見られる場合、この動作自体は過度に心配しなくても問題ないケースが多いですが、病気や怪我による痛みや苦痛のサインの場合は適切な対処が求められます。また、犬の噛み合わせが悪い場合も、獣医師に見てもらいましょう。

 

歯や口内のトラブルの場合

食べ物が歯にはさまっている、歯周病や虫歯など口内トラブルによる不快感から「噛みしめる動作」が生じているようであれば、動物病院で適切な治療を受けましょう。歯周病の予防には歯みがきが有効なので、日頃からしっかりと口内ケアをしてあげることも大切です。

歯ぎしりをしやすい犬種や年齢、性別はある?

子犬

犬種や性別によって特に歯ぎしりをしやすいということはありません。ただ、「噛みしめる動作」は、歯の生え変わりの時期の子犬などに見られることが多いです。

犬の歯ぎしりから発生する可能性のあるトラブルは?

犬の歯ぎしりを放置していると、様々なトラブルが生じてきます。犬が心身ともに健康で過ごせるよう早めの対処を心がけましょう。

 

咀嚼が困難になる

歯ぎしりをすると、歯根部への強い衝撃、ならびに顎の骨への強い力がかかります。その部分の炎症や痛みから普段の咀嚼ができなくなってしまうことにつながってしまうでしょう。

 

下顎の顎の骨が折れてしまうことがある

骨の病気や代謝の異常などがあれば、下顎の骨が折れてしまうことも。歯肉の炎症が続くなど、口周りのトラブルも生じてきます。

 

ストレスにより心身ともに負担がかかる

ストレスが原因で歯ぎしりをしている場合、ストレスを軽減してあげないと犬にとって心身ともに苦しい状態がいつまでも続いてしまいます。この状態が続くと、ほかの病気を引き起こすリスクも高まるので、できるだけ早めに対処してあげましょう。

 

「噛みしめる動作」は病気のサインの可能性も

お伝えしているように、「噛みしめる動作」は何らかの病気のサインとも考えられます。放置しておくと病気の発見や治療の遅れにつながることもあるので、原因を明確にするためにも、まずは動物病院を受診して獣医師の判断を仰ぐことをおすすめします。

 

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