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お迎えしたわんちゃんが急に反抗的に!その原因はまさかの思春期だった!?【Dr.茂木が教える最新いぬ塾Vol.01】

お迎えしたわんちゃんが急に反抗的に!その原因はまさかの思春期だった!?【Dr.茂木が教える最新いぬ塾Vol.01】

わんちゃんをお迎えしてからしばらくして、急に反抗的になって言うことを聞かなくなったと思ったことはありませんか? 最新の研究により、わんちゃんにも人間同様に思春期があることが分かったのです。ヤマザキ動物看護大学で獣医動物行動学を研究する獣医師・茂木千恵先生のコラム。今回のテーマは「犬の思春期」についてです。



人間に思春期があるように犬にも思春期がある!?

人間の思春期は、だいたい中学生から成年になるまでの間に訪れます。身体的な面では初潮・精通があり、精神面・行動面ではいわゆる反抗期を迎えます。思春期の時期には個人差があり、親子間の愛着関係(愛情を注いだり甘えたりする情愛の関係)で初潮が早まったり、反抗的な行動が強かったり頻繁に起こったりすることがわかっています。

では、わんちゃんの場合はどうでしょうか。以前から専門家の間では、わんちゃんにも思春期があるのではないかと言われていました。それが最近の研究で、月齢6か月から9か月に起こっているということがわかったのです。わんちゃんの思春期特有の行動、もしくは思春期から始まる行動は、以下のようなものがあります。

【思春期特有の行動】

  • いろいろなことにこだわりはじめる
  • 突然攻撃的になる
  • 異様に怖がりになる
  • 飼い主の言うことをきかなくなる(葛藤行動)


【思春期から始まる行動】

  • 後ろ脚をあげる(オス)
  • 外で排泄ができるようになる
  • ニオイを丁寧に嗅ぐようになる



最新の研究で犬の思春期についてわかったこととは?

犬にも思春期があるとはっきりわかったのは、2020年5月13日に発表された論文(※)によります。この論文の研究では次のような調査が行われました。

【調査】

人間の思春期との類似性を研究するため、行動分析とアンケートによる調査が実施されました。行動分析では、ジャーマン・シェパード、ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバーとそのミックスの盲導犬候補のメス70頭を実験に使用。飼育者につきまとったり後追いしたりする愛着行動(親密さを求める行動)、飼育者がいなくなったとき震えるなどの分離不安行動、「座れ」のコマンドへの従順性について調査されました。ちなみに盲導犬訓練中のわんちゃんは常にトレーナーと一緒にいるため行動変化の様子を調査しやすく、研究調査ではよく使われています。アンケート調査では、ペンシルバニア大学で開発された「C-BARQ」システムを用いて回答を募り、わんちゃんの行動パターンを数値化しました。


【調査結果】

5か月齢のころに、飼育者に対して強すぎる愛着行動を示し、人の注目を欲しがる行動が頻繁に見られたメスのわんちゃんは、平均よりも1〜2か月早く初回発情が起こりました。逆に飼育者への興味が薄いわんちゃんは、初回発情が遅くなるという結果となりました。

コマンドの調査では、飼育者には従わないのに、見知らぬ人だと素直に従うという反抗期的な行動が、8か月齢のわんちゃんに見られました。一方、5か月齢のわんちゃんには、飼育者に対しても見知らぬ人に対しても従順性に差はありませんでした。また、5か月齢や12か月齢のわんちゃんと比べて、8か月齢のわんちゃんには分離不安行動が多く見られました。このことは、8か月齢の従順性の低下と関連していました。



わんちゃんとオーナーのバランスのよい愛着関係が重要

この論文により、飼育者、つまりオーナーとの愛着関係によってわんちゃんの初回発情の時期が早まるという、人間の思春期と似た部分が確認できました。なぜ初回発情が早まるのかというと、本能的なものだと推測できます。すなわち、わんちゃんが自分の置かれている環境を不安定で辛いと感じると、「いつまでも子どもではいられない、早く成長しなければ!」と脳が考え、生存本能で身体の成熟が早まるのです。

また、飼育者と離れることに不安やストレスを感じやすいわんちゃんは、それによって心が不安定になり、本当は好きなのに素直な態度を示せないという、いわゆるツンデレな行動をすることもわかりました。人間の思春期でも、このようなことがあると思います。

これらのことから、オーナーと慈しみあう愛着関係が不安定だと、わんちゃんの思春期を早めることが考えられます。不必要に思春期を早めないためには、オーナーとわんちゃんとの相性がよく、わんちゃんからの愛情欲求をオーナーが適切に受け入れられることが望ましいです。ですが、人もわんちゃんも性格や感情など個体差があるので、これが上手くいかないこともあります。さらに、わんちゃんがオーナーと一緒にいたいと強く感じていても、日中は一人でお留守番というように、改善が難しい環境のご家庭も存在します。それが思春期を早める結果になることもあるのです。




反抗的なのはその子の性格じゃなく、思春期が原因の可能性も!

通常、わんちゃんの思春期は月齢6〜9か月ぐらいの時期です。それがオーナーとの愛着関係によって、1〜2か月早まる可能性があります。今年6月1日に改正動物愛護法が施行され、わんちゃんを迎え入れることができるのは早くても生後56日以降となりましたが、それはつまり、家族として迎えてすぐに思春期に突入するわんちゃんもいるかもしれないということです。

人間の感覚だと、わんちゃんの思春期は想像以上に早くに訪れます。ですので、その時期の反抗期的な行動を、その子の個性や性格だと誤認してしまうオーナーが多いのではないかと感じます。これで家族になることを諦めたり、罰を与えるようなしつけをすることがあったりしては、とても悲しいことです。

この時期の反抗期的な行動は、あくまでも思春期特有のものであり、永遠に続くわけではありません。人間の反抗期に比べたら本当に一瞬です。この時期に言うことを急に聞かなくなったら、それは愛犬の思春期だと理解して、オーナーとして適切な対応をすることが大切です。対応を間違えて甘やかしてしまうと、それを学習してしまい、後々まで引きずる可能性があるので注意しましょう。そして困ってしまったときは、家族だけで悩まず、専門家に相談をしていただければと思います。




(※)論文
“Teenage dogs? Evidence for adolescent-phase conflict behaviour and an association between attachment to humans and pubertal timing in the domestic dog“
Lucy Asher, Gary C. W. England, Rebecca Sommerville and Naomi D. Harvey 2020
Biol. Lett.16 20200097




著者プロフィール

茂木千恵

獣医師/茂木千恵

ヤマザキ動物看護大学准教授。博士(獣医学)。専門は獣医動物行動学。大学で教育研究...

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