お客様と、そしてマックスと、紡いだ物語

お客様と、そしてマックスと、紡いだ物語
お店にいらっしゃるお客様とそのわんちゃん、そしてわが愛犬マックス。​ フレンチレストラン「Grandir」のオーナーシェフ藤田さんは、彼らを思い続けてきたなかで、かけがえのない関係を築いてきました。

そこにある存在を、敬う

まず、Grandirのドアを開けると、手すり付きのスロープになっていて、バリアフリーであること。​ そして、各テーブルは、できる限りプライベートが守れる席数に抑えられ、お客様とわんちゃんの時間を尊重するスペースが確保されています。​ なおかつ、店舗中央のテーブル席は仕切りとして置いてあり、客席ではないそうです。売り上げを考えれば、席数はあった方がいいはずなんですけどね。​ それでも時に、わんちゃん同士で微妙な空気になることも。そんな時、シェフはお客様同士のコミュニケーションを尊重すると言います。​

最低限のマナーを守れないお客様には声をかけますが、通常は、何かあれば飼い主さん同士で声を掛け合えるもの。考えてみればお散歩でもそうですよね。​ 実は口を出す方が簡単で、厨房から見守るにも忍耐がいるといいます。でも、藤田シェフはこの8年間、わんちゃん同士、飼い主さん同士が直接コミュニケーションを取ることで、お友達になれたこと、コミュニティができたこと、そんな思い出のシーンをたくさん見てきました。​

信じるって、簡単なことじゃないと思うんです。でも、どんなエピソードも笑顔で語る藤田シェフから感じるのは、店の主役である食材の力を、そして飼い主さんがそれぞれに持つわんちゃんへの愛情を、信じて「敬う」という一貫性でした。​

マックスがくれた237個の勲章

そんなシェフの愛情を、愛犬マックスもたっぷり受けて育ったわんちゃん。​ まだ赤ちゃんだったマックスに、ペットショップで一目惚れをした藤田シェフ。犬が苦手だった奥様でさえ、小さなマックスを抱いたら離れられず(笑)。​ わが子として迎え入れ5ヶ月経った頃、マックスはしつけのため、女性トレーナーの元に預けられます。​

しかし3週間後、マックスに会いに行った藤田さんは、そのトレーナーに疑問を抱き、すぐさまマックスを連れて帰ります。​ 戻ってきたマックスは、人とりわけ女性、そして人の手を怖がるわんちゃんに。​ 愛あるトレーナーの方はたくさんいらっしゃいます。それが基本です。でも、マックスのようなことが起きることも事実なのです。​ 戻って来たマックスは、お世話するシェフに抗い、引っ掻き続けました。​ でも、藤田シェフは分かっていました。「小さなマックスは、きっともっと痛かった。きっともっと怖かった」。​

シェフの腕や足には今も残る傷が日に日に増え、当初、温泉など肌を晒す場所には行けなくなるほどでした。途方に暮れる日々に、ふと数えれば、237個の傷があったといいます。​ そんな日々を幾日も幾日も繰り返しながら、マックスのなかで少しずつ何かが変わっていきます。どんなに傷つけても自分から逃げず、愛情を注ぎ続ける藤田シェフと奥様に見守られ、マックスは健やかな成犬に成長していきました。​ 今、マックスは立派な老犬に。仕事を終えたシェフを待って、ボール遊びをしたり散歩に出かけたり。​

かかりつけのドクターも、事情を知った上で毎回こう言ってくれるそう。「マックス、きみは本当にいい子だよ」。​ マックスは今、パパになら思い切り頬ずりをして、膝に乗っては甘えてきます。 そして、マックスにはこう思うのです。​

「美味しい料理でみんなを笑顔にするパパ。そんなパパに残った傷は、きみを幸せにしたキラッキラの勲章だね」。​

著者プロフィール

わんクォール編集部

わんクォール編集部

カインズ・ペットメディア推進室のWanQol編集チームです。わんちゃんとオーナー...

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